近い将来、多くの病院が姿を消す!?
全国の病院が今、大きな岐路に立たされています。
厚生労働省の調べでは、2015年10月現在、全国に病院(20床以上で入院医療が主体の医療機関。19床以下は診療所)は8480か所あります(平成27年医療施設調査)。病院は長い間多くの儲けを生み出す象徴的な存在として受け止められてきましたが、実際には経営環境は悪化し続け閉院に追い込まれるケースが少なくありません。
近年の高齢化により医療を必要とする高齢者が増えているため、病院にとってはビジネスチャンスだとみられがちですが、その数は1990年の1万96か所をピークに減少し続けており、多くの病院が近い将来姿を消しかねないとすら言われています。
病床削減の理由は、国や地方財政の「極端な悪化」
こうした矛盾が起こるのはなぜでしょうか。
背景には、医療需要の高まりに、国・地方の財政が対応しきれていないことがあります。医療需要は今後、首都圏や大阪など大都市を中心に、すさまじい勢いで増えるとみられています。
国が2015年6月に発表した試算では、病気になった患者を受け入れる病院や診療所の病床は、何も手を打たなければ2025年には全国で152万床必要になります。2013年時点で全国に整備されている病院や診療所の病床は134.7万床なので、単純計算だとこの12年間に1割増が見込まれます。
しかし、国は病院を地域ごとに再編成し、病床はむしろ削減させる方針です。代わりに「在宅医療」へと向かわせようとしているのです。
医療需要が増えるのになぜ病床を削減するのか、皆さんは不思議に思われるかもしれません。その理由は国や地方財政の極端な悪化にあります。医療や介護などの社会保障制度を維持・運用するための費用は、国と地方の税金でも負担していますが、近年の医療需要の増加は国・地方の財政を強く圧迫しており、もはや限界を迎えています。そのため、病院の病床を減らし、医療費の削減を図ろうとしているのです。
しかしここで疑問なのは、在宅への医療シフトが果たして医療費の削減につながるのかということです。在宅医療の問題については後述します。