噛み合わせの悪さが身体症状を引き起こすことも
前回の続きです。
ところで、歯並びを悪くするといわれる原因のひとつに「口呼吸」があります。口呼吸もまた、虫歯や歯周病にもなりやすい習慣です。
口で呼吸をすると、歯や歯茎が乾きます。唾液は、唾液の流れで口の中の汚れをある程度、取り除く働きがあるのですが、口呼吸で口腔内が乾くと、唾液が歯や歯茎に行き渡らなくなり、その機能がうまく働かずに汚れがたまってしまいます。
また、ものをきちんと噛めないまま飲み込むと胃腸にも負担がかかります。特に高齢者で胃腸が弱いという人は、ものをきちんと噛めていないことが原因になっているかもしれません。
噛み合わせが悪いと、食べ物にあたっている面積が少なくなり、噛む効率が悪くなります。そのため、いくら噛んでもなかなか飲み込めないなど、咀嚼がスムーズにいかないことも出てくるでしょう。
歯は1本1本が脳の神経につながっています。成人の場合、28本の歯すべてできちんと噛めていれば、そのすべての信号が脳に伝わります。すると脳の血流も活発になります。噛み合わせのバランスが悪いことは、頭痛の原因となったり、視力の低下につながるとも考えられています。
手遅れになる前に「充分なケア」を習慣づける
みなさんは「8020(ハチマルニイマル)運動」を知っているでしょうか。これは、1989年より当時の厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会が推進している、「80歳以上になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。
20本以上の歯があれば、食生活において、健康な咀嚼や消化はほぼ満足にできるといわれています。80歳になっても自分の歯を20本以上保ち、その歯をつかって物を食べるためには、定期的に歯科検診に通い、ケアすることが大切です。
日頃から口腔内のケアを行っている人とそうでない人とでは、健康寿命にもはっきりとした差が現れます。一度失われてしまった歯は、もう元に戻すことはできません。歯のケアは、いつ始めても早すぎるということはありません。逆に、手遅れになる前に充分なケアを習慣づけることが肝心なのです。
デンタルケアをすることは、歯の健康はもちろん、身体全体のさまざまな病気を予防するために有効であることを、欧米人はよく知っています。私は、日本にも欧米と同等の考え方やケアが根づき、日本の国民すべてが8020(ハチマルニイマル)を達成する日がくることを願ってやみません。