虫歯や歯周病の原因にもなる「歯並び」の悪さ
歯並びと歯の寿命には、関連性があります。そして、虫歯や歯周病を予防する対策のひとつとして有効なのが、矯正歯科治療です。
それはなぜかというと、歯並びが悪いままで放置していると、虫歯や歯周病になりやすくなります。歯並びが悪いと食べかすなどの汚れが歯にたまりやすくなり、歯磨きをしてもブラシがうまく届かず、汚れを落としきれない部分ができてしまうからです。
歯が重なり合っているために虫歯があることに気付けない、ということもよくあります。実際、私が矯正歯科治療をした患者さんの中にも、歯を動かして並びが揃ってきた時になってやっと、歯が重なって隠れていた部分が虫歯になっていたことがわかったというケースがいくつもあります。
歯が傾いている状態では、かぶせものが取れやすいなど、歯並びが悪いと虫歯の治療が難しくなってしまうというデメリットも生じます。また、子どもの場合、歯並びが悪いと転んだ時に歯が折れやすいという傾向もみられます。
全体の歯並びは比較的揃っていて、1本の歯だけが内側に入ってどこかに当たっていたりする場合などでも油断はできません。噛み合わせは、全体のバランスが正しくないと、噛む時に一部の歯にだけ強い力がかかりやすくなってしまいます。すると、力がかかりすぎた歯は根本が揺さぶられてすぐにぐらついてしまいます。このような症状を「咬合性外傷」というのですが、この咬合性外傷は歯周病の主な原因のひとつとなっています。
歯がぐらついて抜けてしまったあと、そのすき間を放置していると、隣の歯がそこに倒れてきたりして噛み合わせがずれ、今度は違う歯に噛む力の負担がかかってしまってその歯が咬合性外傷になったりもします。
歯のトラブルは1本でも放置していると、そこからドミノ倒しのように次から次へと悪い部分が広がりやすくなります。
欧米では歯科教育の文化が定着しているが・・・
現在、日本人の成人の約8割が歯周病にかかっているというデータが出ています。
欧米では、歯の大切さ、虫歯や歯周病の怖さについて教育する文化が定着しており、子どもの頃から家庭や学校などで対処方法をしっかり学んでいきます。たとえば、欧米では大人も子どもも、食事のあとはデンタルフロスを欠かしません。
また、歯が生え換わる時期や中学、高校にあたる学年への進学の時は、皆が一斉に矯正歯科治療を始めるタイミングともなっています。クラス中に矯正歯科治療のワイヤーを付けた子どもたちがたくさんいるというのは、欧米ではごく当たり前の光景です。
それは、「歯がいかに大切なものか」という教育が行き届いているという表れでしょうし、「歯を大切にすること」の重要性がきちんと理解されているからなのだと思います。
一方、日本の学校でクラスを見渡した時、矯正器具を付けている子どもはどれだけいるのでしょう。食事のあと、家族みんながデンタルフロスをつかって歯をキレイにしているという家庭はどれだけあるのでしょうか。