今回は、NISA(少額投資非課税制度)の利用する上での注意点を見ていきます。※本連載は、元メガバンカーで、現在はファイナンシャル・プランナーとして人気の高い高橋忠寛氏の著書、『ズボラでも「投資」って、できますか?』(大和書房)の中から一部を抜粋し、大切なお金をしっかり守り、上手に増やすために必要な基礎知識を伝授します。

5年間で利益が出なければ非課税のメリットもないが…

山田:NISAにはデメリットはないんですか?

 

高橋:問題点がないことはありません。それは、現在のところ、運用できる期間が5年だということ。

 

山田:高橋さんは、確か10年くらいの長い期間で資産を運用することが大事って言っていましたよね?

 

高橋:よく覚えていましたね。そうなんです。短期で結果を求めるのはリスクが大きいわけですが、NISAの5年制限というのは、ちょっと使い勝手が悪いのです。

 

山田:どういった問題がありますか?

 

高橋:例えば、5年間で利益が出なかった場合、非課税になるメリットを受けられないだけではありません。NISA口座ではなく一般口座(特定口座も)で資産運用をしておけば、たとえマイナスになっても、他でプラスになっているものがあれば相殺することができるのですが、NISA口座ではそれができないんですよ。

 

山田:す、すいません・・・。よく理解できないので、具体的な例を挙げてもらえないでしょうか?

 

高橋:そうですね・・・。例えば、A社の株で利益がマイナス(損失)でも、B社の株で利益がプラスであれば、両方を合算して損益を計算します。これを「損益通算」と言います。もしA社の株の損失がB社の利益よりも大きければ、全体として損失になるので税金を納める必要はありません。

 

山田:2つ合わせてプラスかマイナスか、ということですね。

 

高橋:さらに、その損失を持ち越して翌年の利益と相殺することもできます。「損失の繰越」と言われているものです。

NISA口座と一般口座は損益の相殺・繰越ができない

山田:前の年にマイナスならば、次の年のプラスから、前年のマイナス分を引くことができるんですね。

 

高橋:そうです。ところが、損失が発生したA社の株をNISAで運用した場合、B社の株を一般口座(特定口座)で運用していると、B社の株での利益と相殺することができないんですよ。さらに、損失の繰越もできません。そのため、全体としては損失であっても、B社の利益は課税対象になるので、税金を払う必要があります

 

山田:全体としてマイナスなのに、税金が発生すると?

 

高橋:余計な税金が発生する可能性があるということです。NISAを利用せずに投資していたら発生しない税金なんですよ。

 

山田:でも、NISA口座だけ、つまり非課税枠内だけで投資すれば、何も問題ないんじゃないですか?

 

高橋:それはそうですね。でも、例えば年間120万円までをNISA口座で投資して、そのまま置いておけば5年間は非課税ですが、もし途中で売ってしまうと、その非課税枠はなくなり、再利用できなくなります。別の金融商品に切り替えようとしても、非課税枠が残っていないとNISAで投資はできないということです。

 

山田:なぜ、そういうことになっているんですか?

 

高橋:もし非課税枠の再利用を認めてしまうと、お客さんに金融商品の売買を何度もさせて、金融機関が手数料を荒稼ぎしようとするかもしれません。金融庁は、投資家を保護するために非課税枠の再利用を禁止したという背景があります。

 

山田:一応、私たちのためではあるんですね。

本連載は、2017年7月5日刊行の書籍『ズボラでも「投資」って、できますか?』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ズボラでも「投資」って、できますか? 元メガバンカーが教える お金を守り、増やす超カンタンな方法

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高橋 忠寛

大和書房

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