「資産の置き場所」によって課税額が変化する!?
山田:他に節税になる制度はあるんですか?
高橋:個人資産に関わる税制優遇は多々あります。税金に対する意識を持っている人だけが、資産を守ることができるので、本連載の中でも特に大事な部分です。
山田:知らないと、いつの間にか損をしていることになるわけですね。
高橋:資産運用で言うと、同じ投資をしていたとしても、資産をどこに置くかによって、手元に残るお金が変わってきます。
山田:どこに置くか?
高橋:そうです。本書籍『ズボラでも「投資」って、できますか?』の第1章では、資産を配分することが大事だという話をしました。
山田:資産の組み合わせによって、リスクを減らすことができて、効率的にリターンを追求するって話でしたよね。
高橋:そのような考え方を「アセットアロケーション(資産配分)」と言います。特に長期の投資においては、成果を決定づけるもっとも重要な要素です。そして、もうひとつ「アセットロケーション(資産配置)」という言葉があります。
山田:ん?アセット・・・、アロ・・・、ロ、ロケーション・・・?
高橋:少しややこしいですが、先ほどの「アセットアロケーション」から「ア」がひとつ取れただけですね。「アセットロケーション」とは、税制面を考慮して、資産をどこに置くか、どういった形で保有するかという考え方のことです。
山田:よ、よくわからないです・・・(すいません)。
高橋:要するに、資産を置く場所(=ロケーション)を考えることも大事ということです。
山田:どうして資産の置き場所が大事なんですか?
高橋:それは、資産を置く場所で、税金が違うからです。
山田:そ、そうなんですか? よく海外に資産を置いたほうがいいと聞きますが、そういう話ですか?
高橋;いえいえ、そういうのではなく、単純に非課税制度を利用するわけです。具体的には、書籍の第1章で解説しているNISA口座を利用します。
山田:NISA・・・。一時期よく聞きましたね。
最大600万円までが非課税になる「NISA」
高橋:NISAとは、少額投資非課税制度のことで、その名の通り、少額の投資であれば、その投資で得た5年の間の利益に税金がかからないという制度です。少額と言っても、1年あたり120万円までで、5年間、毎年利用できるので、総額で最大600万円までが非課税の対象になります。
山田:600万円というのは、かなり大きいですね。非課税になると、どのくらい得をするんですか?
高橋:通常、株や投資信託などで得た利益(配当金や分配金、売買差益)には、税金が20%かかります。例えば、1万円の利益が出たら、2000円を税金で差し引かれるわけです。もし100万円の利益が出ても20万円も引かれるのですから、手元には80万円しか残りません。
山田:かなり持っていかれるんですね。
高橋:ところが、NISA口座であれば、100万円まるまる自分のものになります。
山田:それはいい!
高橋:NISA制度は2014年から開始されました。当初は年間100万円までの投資からの利益が非課税の対象だったのですが、2016年から年間120万円までに拡大しています。
山田:NISAの狙いは何なのですか?
高橋:「貯蓄から投資へ」という流れを促すのが狙いで、既存の投資家よりも、投資初心者に投資を始めてもらうことでした。特に若い世代の投資経験がない人に対して、「少額であれば優遇しますので、ぜひ投資してください」という意図が金融庁にはあったのです。
山田:じゃ、若い世代もどんどん投資しているんですね?
高橋:残念ながら、現状ではNISAを利用している人は、投資経験のある高齢の方が中心というデータもあります。NISA口座を保有している人の属性を金融庁が発表しているのですが、それによると半分くらいは60歳以上で、しかも投資経験のある方とのこと。
山田:じゃ、あまりうまくいっていないんですね。
高橋:それはそうなのですが、NISAは投資初心者には優しい制度であることは、間違いありません。どうせ投資をするのであれば、使わない手はないですよね。
山田:利益がそっくりそのまま自分のものになるわけですもんね。
高橋:面倒だと思わずにNISA口座を開設してほしいと思います。