一番重要なのは「資産を増やす」ことではない
さて、みなさんは、資産運用と聞くと、どういったイメージを持たれるでしょうか?
「資産を増やすための投資」というイメージを持たれている方が多いのではないかと思います。もちろん資産を増やすことも大事ですが、それよりももっと重要なことがあります。
それは、資産を守ること――。
何から守るかと言うと、怪しい儲け話にのって詐欺にあうことや、金融機関の営業マンの調子のいいセールストークにのせられてカモにされたり、ダメな金融商品を掴まされたりすることから守るだけではありません。
どのような世の中になっても、自分の資産の実質的な価値を失わないように管理することも大切です。どちらかと言うと、「資産運用」ではなく「資産管理」と言ったほうが、私の考え方に近いかもしれません。
本連載では、「自分のお金を守る」ことに主眼を置きながら、「自分のお金を増やす」ための金融商品や保険、不動産、税金との付き合い方を、具体的に伝えていきたいと思います。
あなたのお金を守るのは、あくまでもあなたです。人任せにしないことが大前提です。
「自分のお金を守る」とは、自分の生活を守ることであり、自分の人生を守ることでもあります。
お金があれば幸せかどうかはまた別の話として、お金がなければ生きていけないのも事実です。食べるもの、着るもの、住まい、医療・・・など、最低限の生活を送るためにはお金が必要です。
将来のお金に対して不安な人も多いと思います。それは、初対面の相手に対して不安を感じるのと同じで、お金の守り方について知らないことが要因のひとつかもしれません。
「老後のお金はどうしよう・・・」と不安に思いながら、何も行動せずに後回しにしたり、面倒だと思って先送りにしているのではないでしょうか。よくわからないことに直面して、「まぁ、いいか。今度考えよう」と思考停止になっていないでしょうか。
「知らないために損している」ケースは案外多い
お金のことについて、これまで誰も教えてくれなかったかもしれません。学校でも学びませんし、親からも教えてもらっていないと思います。
「無駄遣いしたらダメよ」「計画的に使いなさい」といったことは言われたとしても、資産管理の方法や金融商品との付き合い方、インフレなどの経済と自分のお金との関係など、具体的なことは誰も教えてくれません。なぜなら、学校の先生も親も、よくわかっていないからです。
大多数の大人は、自分のお金をちゃんと管理できていないもの。銀行員なのに、自分のお金を自分で管理できていない人もたくさんいます。高給取りであっても、破産寸前の人もいます。職業や資産の有無に関係なく、自分で一生懸命コツコツ勉強している人だけが、お金の管理の仕方を知っているのです。
もう一度言いますが、お金を守るとは、自分で資産を主体的に管理することです。お金に関する知識(金融リテラシー)は、一生ものの財産になります。
私は、無駄遣いをしたらダメと言っているのでも、質素倹約を推奨しているわけでもありません。他人から無駄遣いに思えることでも、本人にとっては価値があるのであれば、無駄遣いではありませんし、それが人生の楽しみでもあると思います。
ただ、知らないことで損をしていること、騙されていることは案外たくさんあります。効率的な資産形成、保険の利用方法、住宅ローンの選び方、税金が優遇される制度など、知っておいたほうがいいことは、たくさんあります。
大変そうに思えるかもしれませんが、それほど難しい話ではありません。基本的なことさえ押さえておけば、ズボラな人でも大丈夫。本連載では、全体像を把握するためのポイントをわかりやすく解説していきたいと思います。