年金だけでは十分な老後資金が確保できない社会の到来する日本では、手元にあるお金を守ることはもちろん、将来を見越した資産形成も、自身の手で行う必要があります。本連載は、元メガバンカーで、現在はファイナンシャル・プランナーとして人気の高い高橋忠寛氏の著書、『ズボラでも「投資」って、できますか?』(大和書房)の中から一部を抜粋し、大切なお金をしっかり守り、上手に増やすために必要な基礎知識を伝授します。

自分のお金を守れるのは「自分」だけ

あなたのお金を狙っている人たちがいます――。

 

何も泥棒や詐欺師があなたのお金を盗もうとしているわけではありません。銀行や保険会社、証券会社といったまっとうな金融機関の営業マンたちが、あなたのお金を狙っているのです。

 

簡単に言うと、彼らはお客さんのために金融商品を売っているのではなく、自分たちのために販売しているからです。会社の利益になるような商品、自分のノルマが達成できるような商品を売りつけているのです。

 

これは私だけがそう思っているわけではありません。

 

金融庁の長官も「これまでの金融サービスは顧客の利益が最優先されてこなかった」と認めていて、金融関係者であれば誰もが認識している事実なのです。

 

世の中に金融商品のセールスを目的とした情報があふれているのは、売り手側から出された情報ばかりだからです。メリットばかりが強調されて、ちゃんとデメリットを述べていない偏った内容の情報があふれています。

 

私は、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)の元銀行員で、主に法人営業や富裕層向けの相続に関するビジネスを担当していました。その後、シティバンク銀行に転職して、個人向けの資産運用のアドバイスを中心に、証券仲介や保険商品、住宅ローン、不動産投資ローンなどを販売してきました。

 

ですから、銀行など金融機関側の事情はそれなりにわかっているつもりです。

 

どう見てもお客さんのためにならないようなダメ金融商品であっても、手数料を多く取れる(つまり会社の利益が多くなる)、または販売しやすいという理由だけで、オススメ商品として顧客に販売されている現実を多く見てきました。

 

銀行も民間企業ですから、利益を出さないといけません。そういう意味では、仕方がない面も少なからずあります。

 

「でも、本当にそれでいいのだろうか?」

 

そういう疑問は次第に私の中で膨らんでいきました。そして、本当にお客さんのためになる仕事をしたい、お客さんに役立つ情報を発信したいと思い、2014年に株式会社リンクマネーコンサルティングを設立しました。もともと独立志向が強かったのもあります。

独立した立場のFPも「金融機関の営業担当者」と同じ!?

私の現在の肩書きは、ファイナンシャル・プランナーです。

 

ところが、「お金のプロ」としてお客さんの相談役になるはずのファイナンシャル・プランナーも、あなたのお金を狙っています。

 

多くのファイナンシャル・プランナーは、保険商品や金融商品の仲介業者として、その販売手数料を収入源としています。そのため、自分が契約している保険会社や証券会社の商品を紹介したり、できる限り販売手数料の高い商品をお客さんに売ろうとします。悪気はなかったとしても無意識に、売り手側の都合で考えてしまっているのです。

 

それでは、お客さんのお金の問題を本当の意味で解決することはできません。

 

将来のお金に対する不安をなくすためには、手数料の高い保険商品や投資商品ではなく、確定拠出年金(DC)などの公的な制度を活用したほうがいいですし、保険の見直しをする場合も、現在加入している保険を解約して新しい保険に入り直すのではなく、単に保険を解約したほうがいい場合もあります。

 

このようなアドバイスをしても、販売手数料などは発生しません。ですから、もし販売手数料を収入源としてしまうと、たとえ悪意がなくても、そのお客さんにとってベストな提案ができなくなります。

 

言ってしまえば、お金の相談に来られたのに、逆にお客さんを喰いものにしているようなもの。結局、独立した立場であるファイナンシャル・プランナーは、「無料」で相談を受けてくれますが、金融機関に所属する営業担当者と同じなのです。

 

そのため、私は資産管理・資産運用のコンサルタントとして、相談に対する対価(相談料)をいただいています。

 

例えば、相談時間に応じた相談料をいただいたり、定期的に相談に乗らせていただいているお客さんに対しては、対象となる資産の額に応じたアドバイス報酬(例えば、年1%)を頂戴しています。

 

そのほうが、お客さんのためのアドバイスができるからです。

 

私以外にも、そういったアドバイス報酬で生計を立てておられる方はたくさんいらっしゃいます。そのようなアドバイザーは、メリットよりもデメリットやリスクについてしっかり説明してくれますし、結論を決めつけずに選択肢を提示してくれるはずです。また、アドバイザーにも専門分野があります。保険のアドバイザーに資産運用のことを相談しても意味がありません。

 

誰かに相談するときは、アドバイザーの「立場」と「専門性」に注意してください。

本連載は、2017年7月5日刊行の書籍『ズボラでも「投資」って、できますか?』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ズボラでも「投資」って、できますか? 元メガバンカーが教える お金を守り、増やす超カンタンな方法

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高橋 忠寛

大和書房

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