今回は、企業の利益を上げる「4つの方法」を見ていきます。※本連載は、税理士法人古田土会計の代表で、公認会計士・税理士の古田圡満氏の著書、『経営計画は利益を最初に決めなさい!」(あさ出版)の中から一部を抜粋し、社長自らが経営計画を作る重要性と具体的な経営計画の作成方法を紹介します。

売上・粗利益率・売上原価・固定費の数字を徹底追求

利益を上げるための方法は4つです。これ以外の方法は考えられません。

 

方法1:売上を増やす(お客様の数や取り扱う商品の数を増やす)

方法2:粗利益率を上げる(販売単価を上げる)

方法3:売上原価を下げる(変動費率を下げる)

方法4:固定費を下げる

 

これらを考えるうえで、前回取り上げた3つの数字は必須なのです。一つひとつ個別に見ていきましょう。

 

[図表]

 

方法1:「売上」を増やす(Pを一定としてQを増やす)

 

粗利益率は50%のままで、上記の図全体が縦にのびた状態となります。単純計算すると、売上高が10%増せば、110(100 × 1.1)となり、粗利益率50%で、粗利益は55(110 × 0.5)となります。そこから固定費40を引けば、経常利益は15となります。

 

売上を増やす方法は、図表の売上に示した「P(単価) × Q(量)」のうち、Qを増やすという考え方をしたほうが現実的です。お客様の数を増やすこと、商品を多く売ることで成し遂げられます。

 

方法2:「粗利益率」を上げる(Qを一定として売価を上げる)

 

より付加価値の高い商品・サービスを開発し、売価を上げます。粗利益率の高い商品を多く売ります。粗利益率50%の会社では粗利益率が10%下がると粗利益額は20%下がり、粗利益率25%の会社で粗利益率が10%下がると粗利益額は40%下がります。粗利益率の低い業種ほど粗利益率の、粗利益額や経常利益に及ぼす影響は大きくなります。

 

方法3:「売上原価」を下げる(変動費を下げる)

 

図表全体はそのままで売上原価が小さくなれば、粗利益が大きくなります。それは、粗利益率が高くなることと同じです。

 

単純計算で、変動費率が50%から10%下がれば粗利益率は50%から60%に上がりますから、売上高はそのままで粗利益60(100 × 0.6)となり、固定費40を引けば経常利益は20となります。変動費率が10%下がれば粗利益額は20%上がり(50→60)、経常利益は倍(10→20)になります。

 

変動費を下げる方法は「外注していたものを内製化する」「仕入単価・外注単価の交渉」「仕入先の絞り込みによる値下げ」「技術力の向上」、また「仕入過多になっていないか」「入札制度による仕入値の引下げ」しかありません。

 

方法4:「固定費」を下げる

 

固定費の科目は「人件費」「未来費用」「一般経費」「減価償却費」「営業外損益」の5つです。図表の固定費40が下がれば、経常利益は増えます。一言でいえば節約です。しかし現実的には、費用科目一つひとつを見ればわかる通り、非常に難しいのです。

 

「人件費を減らす」とは「社員を減らすか」「機械化を進めるか」「外注を増やすか」「生産をやめて他から仕入れるか」のいずれかを意味するということです。現実的に可能かどうかを慎重に考える必要があります。

 

一方、「未来費用や減価償却費をなくす」とは、会社の未来を考えないことを意味します。通常、一般経費や金利などは削っても微々たるものなのです。ちなみに、人件費削減の優先順位は、「役員報酬」→「社員の賞与」→「社員の給与」→「社員の数」、と常々お客様にはお伝えしています。役員報酬が一番始めにあがっていることに驚かれるようですが、「働いている社員を守り、幸せにする」ことを経営理念にしている著者からすれば当然のことなのです。

 

以上の4つの数字をいかに変えられるかが、利益を上げるために必要なポイントになります。

数字に強くなれば「もっと儲かる」ケースは多い

中小企業は受注事業が多いため、粗利益率が高いものの、固定費が多いので、利益を上げる一番よい方法は、粗利益額を増やすことです。固定費を削減するのは、粗利益が大幅に減少し赤字になり、会社が存続しえなくなったときです。そうなる前に粗利益額を増やす方法を勉強すべきです。

 

著者は多くの中小企業を見ていて、もっと数字に強くなればもっと儲かるのに…という場面を何度か経験しています。例えば、建設業で見積りを出して、競争に負けたという話です。自社は見積り1億円とします。ライバル会社は見積り9千5百万円だとすると5百万円の差で失注しました。何度も繰り返しているので、なぜ9千万円で見積りを出さなかったのかと聞くと9千万円では赤字だというのです。材料費、労務費、外注加工費、経費を積み上げ、一定の利益を出すためには1億円で受注しなければ赤字だというのです。

 

この計算は間違っています。市場に競争相手がいない場合はこれでもよいのですが、市場にライバルがいるときは負けてはいけないのです。原価のうち、材料費と外注加工費は変動費ですが、労務費と経費は固定費です。受注してもしなくてもかかる費用です。変動費率を80%とすると20%の粗利益率で2千万円の粗利益です。

 

10%の1千万円を値引きしても1千万の粗利益を確保できます。9千万円でも受注すべきでした。

本連載は、2017年2月26日刊行の書籍『経営計画は利益を最初に決めなさい!」から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営計画は利益を最初に決めなさい!

経営計画は利益を最初に決めなさい!

古田圡 満

あさ出版

社長にしかできないことは2つある。 ひとつはいかに理念を経営計画に盛り込むか(第1部で解説)。社員が理解できるように作成すると同時に、社長自身が取引先にもしっかりで説明できるようにしたい。もうひとつは商品別販売…

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