赤字となるラインがわかる「損益分岐点」
前回の続きです。
作り変えた損益計算書をさらにわかりやすく下記の図表にしてみます。そこで把握すべき数字は3つ、①売上高、②粗利益、③経常利益です。これは常に頭の中に入れておいてください。経営するうえで絶対必須の数字です。
上記の3つの数字を把握したうえで、チェックすることは「損益分岐点」「労働分配率」「一人当たり生産性」です。
■「損益分岐点」を把握する──赤字になるデッドライン
経常利益がゼロの時の売上は、現状売上高の何%のところにあるかを知ることが経営チェックをするうえで大事なことです。それは売上高があと何%下がったら赤字であるかを意味します。
[計算方法]「固定費 ÷ 粗利益」で損益分岐点比率を求めます。
次回出てくる損益計算書で利益を出す際の例では「 40(固定費)÷ 50(粗利益)= 0.8 」で損益分岐点比率は80%です。単純に売上にこの比率を掛け算すれば、損益分岐点売上高が求められます。ここでは「 100 × 0.8 = 80 」となります。売上高が今より20%以上下がると赤字ということがわかるのです。
「労働分配率」「一人当たり生産性」の考え方
■「労働分配率」を認識する――生産性のみならず事業経営効率を見る
労働分配率とは粗利益に占める人件費の割合をいいます。
[計算方法]「人件費 ÷ 粗利益」で求められます。
次回の損益計算書から利益を出す際の例では「 30 (人件費)÷ 50(粗利益)= 0.6 」で60%となります。労働分配率は経営計画作成の際の指標としても使えるのです。例えば計画で60%を55%にして、人件費を計算できます。
労働分配率の計算式を逆にすると労働生産性になります。労働分配率という見方のみでは人件費の削減に目が行きがちですが、労働生産性では分子が粗利益額になるので、粗利益額を増やすことが生産性を高めるのに重要なことに気づきます。
労働分配率・労働生産性は、労働生産性の指標ばかりでなく、事業経営そのものの効率を経営者に教えてくれる数字といえます。
■「一人当たり生産性」を押さえる――人件費とは関連づけない
一人当たりの利益効率を考えます。
[計算方法]「粗利益÷社員数」で求めます。
一人当たりの生産性を高めるには、一人当たりの粗利益を上げます。決して、一人当たりの人件費を下げるのではないことに注意してください。
中小企業では、もともと給料が低いのです。社員の給料を上げるためには、粗利益額を増やす以外に方法はありません。
ここまでの数字を出して初めて、「利益を出すにはどうすればいいのだろうか?」を考えます。逆をいうと、これらの数字を把握しないで、「どう儲けるかを考えても無意味」ということなのです。
この話は次回に続きます。