今回は、会社の倒産に際し、高齢の社長が「破産」を選択した場合のメリット・デメリットを見ていきます。※本連載は、東京都中小企業振興公社事業継承・再生支援事業登録専門家だった経験を持ち、企業再生支援を中心に活動する坂田薫氏の著書、『社長さん! あなたの資産と会社を守る最後の一手、教えます!』(こう書房)より一部を抜粋し、「倒産回避」「資産防衛」「事業再生」を実現する方法を紹介します。

病気なら医者を頼るが、倒産の場合はどうしたら…

前回に引き続き、破産した佐藤工務店の資産と、佐藤社長の年収を守る方法を考察しよう。

 

いただいた資料をよく見てみると、この不動産、アパートや事務所として貸していて、賃貸収入が年3000万円もあるらしい。

 

弁護士さんなら法的にかたづけようとするから

 

「あんた、バカじゃない。だからどうしたと言うの? 結局、破産しかないでしょう。資産より借入金のほうが圧倒的に大きいのだから」

 

と、さめた答えで終わってしまうだろうし、税理士さんなら、再生屋さんではないので、その材料の生かし方をわからず困惑するはず。

 

で、ここまでの内容で1つ大きなことがわかるはず。

 

何? もったいぶるな! って。では、答えを言っちゃうけれど、破産とか特定調停とかいう考え方や方向性が、債務者のほうから出てきているでしょう? おかしいと感じませんか?

 

ここまで書いて、なるほどね! とわかった方は、頭のやわらかい才能豊かな方。病気にかかった人が、症状から医学辞典とかインターネットで調べて、必要なら病院に行く。でも、自分で調べて病名の目途がついていたとしても、お医者さんにみてもらったら、その診断と治療法に従うでしょう? 決して自分で治療法を決めたりはしない。

 

だけど、倒産という病気の場合、どこに名医がいるか、そもそもどこにお医者さんがいるのかさえわからないから、自分で考えて治療法を決めたり、勉強家な方は無剰余だのといったテクニックを使って治療しようと試みたり……。

 

そこで、債権者が、何かのアクションを行なったとき、「どうしたらいいの?」と困惑したり、結局は、すべてを失ったりすることになるのです。

 

ほとんどの債務者が、自分で正しい診断を下したつもりになって治療法を決めてしまう。だから、はじめから破産だの特定調停だのという言葉が出てくる。

 

この場合、佐藤工務店、佐藤社長が破産すれば、やはりその担保になっているこの不動産は売却せざるをえず、その代わりに、すべての借入れの残債は返済を免れることになる。結果として、親もすべての財産を失うから破産したほうがよいことになる。

 

もっとも高齢だから破産しなくても大して変わりはないけれど。

高齢者による破産のメリット・デメリット

破産のデメリットは一定期間お金が借りられなくなること。しかし、高齢者が新規にお金を借りようとしても無理なので、高齢者にしてみれば、これはデメリットにならない。住宅金融支援機構フラット35や、一般の銀行融資の年齢制限は70歳。60代で破産すれば、その記録が残るから一生借入れができないことになる。

 

破産のメリットで考えると、破産、免責により借入金を返済しなくてもよくなる。破産しなければ追及され続けるかというと、一定の期間経過後は債権者が金融機関なら償却するのでそれもなくなる。

 

問題は倒産した高齢者が新たな資産を作り、金持ちになることだ。この場合には資産に対して差押えなどがされることもあるが、70歳で倒産し、80歳で突然大金持ちになるケースなどはまずありえない。

 

さらに破産しなくても法外な取立てはありえない。次第に債権者はお金がないところから回収しなくなる。だから、デメリット、メリット双方から考えると、高齢者は破産しても、しなくても同じになるわけだ。

 

この話は次回に続く。

社長さん! あなたの資産と会社を守る最後の一手、教えます!

社長さん! あなたの資産と会社を守る最後の一手、教えます!

坂田 薫

こう書房

倒産すれば連帯保証で個人資産はおろか自宅も売られ、収入もなくなるのがフツウ。中小企業には厳しすぎるこの時代に、倒産しても合法的に自宅を守り収入を確保するにはどうすればいいのか…。本書では、「倒産回避」「資産防衛…

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