決算書などの3種の神器をまとめた「ラインシート」
そんなわけで、お話は「破産しても2億円の資産と3000万円の年収が守れた!」の事例に戻ります。
融資はいくらあって、どこから借りていて、債務者は誰で、連帯保証人は誰で、それらはどんな状態で、担保はどのように設定されているか……これらがわからないと診断もできないし、治療法も見えてこない。それらを理解するために必要なものが、「三種の神器」と勝手に呼んでいるもの。
●決算書
●融資の明細
●担保の明細
それが、この3つです。
ちなみに、この3つがコンパクトにまとめられたものが、金融庁の銀行検査や銀行の自己査定などに、その会社の状態を見る手段として使われるラインシート(図表1を参照)。
[図表1]会社の状態がわかるラインシートとは
この事例で、債権者、担保不動産がどうなっているかを、図表2に示してみます。
[図表2]「2億の資産と3000万円の年収を守った」事例の状況
図表2を見ると、倒産して担保不動産を売却するとき、どのくらい返済ができて、どのくらいロスが出るかわかるのだけれど、実際の債権者への配当を正確に書くと、図表3のようになるわけです。
[図表3]債権者への配当詳細
親も、会社も、社長も破産…収入をすべて失うことに!?
さて、この借入れ5億円、図表4を見てわかるように、時価2億円の不動産を担保にして佐藤工務店とその社長の親が借入れをしたもの。
[図表4]借入5億円の内訳
佐藤工務店と佐藤社長が破産し、多くの債権者からの借入れをチャラにし、担保不動産は高値で売却して、親の債務をなくそうと考えたもの。
でもね、世の中そんなに甘くなくて、不動産の時価は、どの不動産屋さんをあたっても2億円程度。
しかも、破産なんだから売却するしかなくて、結局、親も破産、会社も社長も破産、収入をすべて失うという最悪の結論が待っている。これを特定調停(※)で、なんとかできないだろうかと考えていた様子。
(※)特定調停・・・平成12年から施行された債務整理手続きで、裁判所を利用した任意整理。債務を3年以内に返済できるかが成立の目安になる。弁護士をとおさず自分ででき、かつ安い費用でできる簡単な手続きのため、一時利用者が増大した。
この話は次回に続く。