このままでは担保不動産が売却されてしまう・・・!
前回の続きである。佐藤工務店、社長が破産しなければ、事実上倒産して、利益を生むことがない佐藤工務店の借入金を返済するはめになり、結果として差押えまで入っている担保不動産は売却される。
しかも、借入金は期限の利益を喪失していて、全額返済を迫られている。2億円の資産で5億円の借入金等を全額一括返済することはできないことぐらい誰でもわかるし、じゃあ、全額一括返済できるわけがないなら担保不動産を競売しますよ…と担保をつけている銀行が、もう少しすれば間違いなくアクションを起こすだろうし…。
と、ここまで説明して、じゃあ、この連載のタイトル『社長の資産と収入を「破産しても」守る方法』は不可能だね! と考えてしまうようじゃあ、そこから先、生産的なものは生まれてこない。
もう一度、この不動産の状態をよく見ると、
①アパートや事務所として貸していて賃貸収入が年3000万円もある。
②所有者は親。
という2つの大きなキーポイントが見つかる。そして、破産したいのは佐藤工務店と佐藤社長、かくしてこの2つの役立つ情報があって、はじめて病気の治療法が発見できたのです。
不動産担保の設定のない佐藤工務店の借入金を破産で切り捨て、残りの担保に対応する佐藤工務店の借入金と親の借入金を、年3000万円の賃貸収入で返済する返済計画を作ることが始まったのです(以下の図表1は返済計画表の一例)。
[図表1]返済計画表の一例
賃貸収入で返済したほうが有利になることも
ところで、無理やり売却に持ち込もうとした弁護士の後任の弁護士さんと打ち合わせする必要があるなと思い、佐藤さんに電話をかけると、すでに破産の申し立ても終了しているとのこと。
しかたなく管財人さんに根回しし、破産していない親が主導で、担保をつけている債権者に返済計画を示し了解をもらい、2億円の不動産と3000万円の賃貸収入が守れたわけです。
この返済計画だと、単純に不動産を売却するより信用保証協会とB銀行の返済総額がかなり多くなる。
こんなふうに収益を生む不動産が担保なら、返済計画の作り方しだいでは、担保不動産を売って返済にあてるより、賃貸収入で返済したほうが債権者にとって返済金額が多くなり、有利になることもある(以下の図表2を参照)。
[図表2]返済金額が担保不動産売却金額より多くなる返済計画を立てる
これを債務者の立場で考えると、不動産を売らずに収入を守ることができることになる。いまでも条件さえあえば、このやり方は可能だけれど、弁護士さん、税理士さんはじめ常識のある方なら、はなからバカにして信じようとさえしない。
具体的な交渉とかテクニックは書籍で詳述しているが、担保のつけられ方、賃貸収入の金額、連帯保証人とかを理解することによって、不可能を可能にすることだってできるわけです。
倒産しそうな債務者であればあるほど、倒産させまいとか自宅を守ろうとか、自分のことばかり考えるようになるけれど、債権者の銀行さんはそんなこと考えていない。債務者は自分1人で生きているつもりだけれど、実は債権者に生かされている。だから利害が対立して倒産して全財産を失う。でも、債権者の視点で考えれば、おのずと解決策が見えてくる。
債権者が望むことを考えて返済計画を作り、交渉してご覧なさい。ほら、銀行だって怖い存在じゃあないってことがわかるはず。