強みになり得るのは「ヒト・モノ・カネ」の要素
健康的なダイエットでは、余分な脂肪を落とすとともに筋肉を増強することが大切です。筋肉が弱ければ生きていくのに必要なパワーを生み出すことができないからです。企業の「筋肉」に当たるのは、その会社の「強み」「セールスポイント」といわれる部分です。強みをさらに強化することで、会社の利益獲得能力が上がり、業績がアップしていきます。
会社の強みやセールスポイントとなり得るものとしては、次のようなものがあります。
●ヒト(匠の技、技術力、開発力、営業力、知的財産、安定した顧客など)
●モノ(商品力、ブランド力、設備力、特許など)
●カネ(資金力、収益性、資金調達力など)
自社の強みがヒトにある場合は、従業員との関係を良好に保ち、社外への流出を防ぐようにします。モノに強みがあるなら、商品の質やブランドイメージを落とさないような工夫をします。カネに強みがあるなら、より資金力を強化するような営業努力や、金融機関との関係づくりをしていきます。
自社の強みがどこにあるのか分からないという場合は、経営指標などを用いて分析することから始めるといいでしょう。
経営指標は、会社における業績チェックリストのようなものです。貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)から導き出した様々な値によって、その会社の「収益性」「生産性」「安全性」など、様々な観点から経営状態が客観的に測れます。つまり、経営指標を分析していけば、自社の特徴や傾向が見えてくるわけです。
[図表]経営指標
収益性の指標を見れば、投資に対して利益がどの程度生み出されているかが分かります。生産性の指標を見れば、ヒト・モノ・カネなどが無駄なく生産に結び付いているかが分かります。安全性の指標を見れば、収支のバランスが取れているか、資金繰りが安定しているかが分かります。
代表的な「経営指標」から会社の状態を分析する
指標はたくさんあって、100の会社があれば100とおりの指標があるのですが、代表的なものをいえば、「自己資本比率」があります。
自己資本比率は「総資本(負債+自己資本)」のなかで「自己資本」が占める割合を求めたものです。自己資本比率が小さいほど、負債に依存していることになります。業種などにもよりますが、一般的には20%以上あれば優良会社とされています。0~10%は黄色信号、0%を切ると赤信号です。
自社の自己資本比率が高ければ、そこが強みということになり、M&Aの際のアピールポイントになります。ここをさらに強化するには、負債をできるだけ減らしていけばいいでしょう。経営指標のうち「売上高経常利益率」は、経常利益を売上高で割って求めた値で、その会社の収益力を示し、値が高いほどいいという判断になります。
このように、経営指標を参考にして「強み」を強化し、「弱点」を改善するように努力すると、会社が磨き上げられていきます。
そのためには、社長は決算書をある程度は読める必要があるでしょう。「中小企業の経営者の約8割は決算書が読めない」というデータもあるようですが、会社の経理を会計担当職員や顧問の税理士・会計士などに任せっきりにしないことが大事です。
社長が会社の実態をよく分かっていないということは、しらないところで不正取引などが行われている可能性も否定できません。自社の価値を正しく判断し、健全な経営を続けるためにも、決算書の数字から〝意味〟を読み取る習慣は日頃からやっておくといいでしょう。