税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
顧客の利益追求のために従業員教育を徹底
今回も、「顧客本位の業務運営に関する原則」に掲げられた各項目について詳しく見ていきましょう。
原則6【顧客にふさわしいサービスの提供】
原則6では、「金融事業者は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである。」としています。
現行法令上も、金融商品取引業者等は、顧客に適合しない金融商品取引の勧誘を行ってはならないとされています(適合性の原則)。原則6は、顧客の最善の利益を追求するために、適合性の原則を狭義ではなく広義の原則として、より徹底することを金融事業者に求めるものになっています。
原則6の注記として以下の4項目を挙げています。
●金融事業者は、複数の金融商品・サービスをパッケージとして販売・推奨等する場合には、当該パッケージ全体が当該顧客にふさわしいかについて留意すべきである。
●金融商品の組成に携わる金融事業者は、商品の組成に当たり、商品の特性を踏まえて、販売対象として想定する顧客属性を特定するとともに、商品の販売に携わる金融事業者においてそれに沿った販売がなされるよう留意すべきである。
●金融事業者は、特に、複雑又はリスクの高い金融商品の販売・推奨等を行う場合や、金融取引被害を受けやすい属性の顧客グループに対して商品の販売・推奨等を行う場合には、商品や顧客の属性に応じ、当該商品の販売・推奨等が適当かより慎重に審査すべきである。
●金融事業者は、従業員がその取り扱う金融商品の仕組み等に係る理解を深めるよう努めるとともに、顧客に対して、その属性に応じ、金融取引に関する基本的な知識を得られるための情報提供を積極的に行うべきである。
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2番目の項目では、販売ではなく金融商品を組成する金融事業者に対して、商品の組成において想定する顧客属性を特定、および販売への留意を求めています。これまで販売会社からの要望に沿った複雑な商品の組成がいくつか見受けられましたが、今後は商品企画の段階でこの点を明確にすることが期待されます。
4番目の項目では、従業員が金融商品の仕組み等に対する知識レベルを向上させることの重要性に言及しています。従業員が、取り扱う金融商品の仕組み等を正しく理解していなければ、顧客のニーズにあった金融商品を提供し、商品に関する重要な情報を分かりやすく顧客に説明することもできません。従業員教育の徹底を図ることは、顧客の最善の利益を追求する上で極めて重要であると思われます。
顧客本位の業務運営を推進できるガバナンス体制の整備
原則7【従業員に対する適切な動機づけの枠組み等】
原則7では、「金融事業者は、顧客の最善の利益を追求するための行動、顧客の公正な取扱い、利益相反の適切な管理等を促進するように設計された報酬・業績評価体系、従業員研修その他の適切な動機づけの枠組みや適切なガバナンス体制を整備すべきである。」としています。
原則7は、原則2から原則6までの取組みを実現するために、従業員に対する動機づけの枠組みや適切なガバナンス体制を整備するためのものと位置づけられています。
平成28年8月2日の金融庁の市場ワーキング・グループで、業績評価のあり方が顧客本位の業務運営に支障をきたした事例をあげています。販売会社の業績評価においては、「収益・販売額」よりも「預り資産残高」や「顧客基盤の拡大」を重視する動きが増えつつあると指摘しています。
一部の販売会社で見られる具体的な事例として、以下を紹介しています。
●残高目標を重視するあまり、投資信託やファンドラップの解約申し出に簡単に応じない事例
●系列運用会社の投資信託の販売に対して、業績評価上の優遇策を設定し、グループ内の収益確保を優先している事例
●保険販売の業績評価を、収益額から販売額に変えたところ、(手数料率の低い)円建て商品の販売に集中したことより、再度、収益額による評価に変更し、結果として、外貨建て商品の販売が上昇している事例
金融事業者は、現行の組織体制が顧客本位の業務運営を推進するために有効な体制になっているかを検証し、機能していないと判断される場合、業務横断的に所管する体制などへ転換し、一層の強化を図る必要があるでしょう。
次回は、顧客本位の業務運営を確立、定着させていくための方策について解説していきます。
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