M&Aの買い手を見つけるには、業績の悪い部門を整理したり、赤字事業から撤退するなど、会社の体裁を整える必要があります。今回は、そのポイントを見ていきます。

会社分割によって戦略的に自社をトリミングする手も

ここからは、会社の実力の「磨き上げ」をするためのポイントやテクニックについてレクチャーしていきます。

 

まず、第三者の目で見たときに見栄えがよく、魅力的に見える会社とは、どんな会社でしょうか? おそらく一番に挙がるのが、「業績のいい会社」という回答でしょう。業績のいい会社にするためには、業績の悪い部門を整理したり、赤字事業から撤退したりなど事業を整理して、よい部分だけを残すことです。八百屋が野菜を見栄えよくするために、虫食いや変色した葉っぱを取り除くのと同じです。

 

これには、「業績の良い事業」と「業績の悪い事業」とに会社分割し、いいほうだけをM&Aで売却するスキームが適当です。ちなみに、会社分割を活用すれば自分の残したい事業のみを新たな会社として残すこともできます。

 

仮に製造業と不動産賃貸業を手掛けている会社があるとします。このふたつを会社分割で分離し、製造業はM&Aで売却して、不動産賃貸業は手元に残すのです。すると、家賃収入が入ってくるので、社長の引退後の生活に備えることができます。会社分割は使い方によって、戦略的に自社をトリミングするのに役立つということです。

株価の過剰なディスカウントには注意

M&Aでは自社の株価を下げたほうが、買い手が付きやすいのは確かではありますが、あまりに株価をディスカウントしすぎると、かえって会社が安っぽく見え、他より見劣りしてしまうことがあります。

 

ブランド品でも不自然に安いと、「どこかに見えない欠陥があるのではないか」とか「もしかして偽物ではないか」「安くしてでも売りたいほど魅力がないのでは」などと勘繰られてしまいます。企業の売却でも、これと同じことが起こり得ます。そういう意味では、極端に節税をするのは考えものです。節税のためには、経費を増やして利益を減らしますから、どうしても内部留保が充実しません。

 

たとえば、節税のために多額の役員報酬を支払うことがありますが、M&Aを考える上では諸刃の剣です。社長個人の資産を増やすという面ではいいのですが、自社の資産をやせ細らせて体力を奪うという面では危険をはらんでいるからです。

 

M&Aを視野に入れた段階においては、常に健全な財務状態になるように心掛けましょう。

本連載は、2015年9月25日刊行の書籍『後継ぎがいない会社を圧倒的な高値で売る方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

後継ぎがいない会社を 圧倒的な高値で売る方法

後継ぎがいない会社を 圧倒的な高値で売る方法

岡本 雄三

幻冬舎メディアコンサルティング

「後継者がいない」「後継者がいても継がせたくない」そう悩む中小企業経営者が増えています。しかし、廃業となると、経営者自身の連帯保証の問題や従業員の生活の保証、取引先への影響などもあるため、なかなか踏み切るのは難…

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