今回は、IT化で進んだ建築・不動産業界の「価値の多様化」について見ていきます。※本連載では、創造系不動産株式会社・代表の高橋寿太郎氏の著書『建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術』(学芸出版社)の中から一部を抜粋し、「不動産思考」の必要性について詳しく見ていきます。

「あふれる情報」に戸惑う建て主も・・・

魅力的でユニークな建築をつくり、ホームページで公開している建築家や経営者にとって、大比較検討時代は建て主に選ばれやすい環境であり、追い風に違いないと思います。ただし、十分に比較検討できるということは、必ずしも建て主が自分たちに合った能力のあるパートナーや物件とマッチングできるということではありません。膨大な建物やデザインの情報を手に入れることができると同時に、その分惑わされ、何が自分に必要な情報かが分かりにくくなっているという側面もあります。

 

あふれる情報量の割には結局、「誰に相談して良いか分からない」。今でも多くの建て主が口にする意見です。オフィスビルや店舗を建てようという法人企業であっても、基本的には個人の建て主と同じです。実際は見た目の良いホームページを比較するだけでは、選択肢は絞りきれないでしょう。

業界には厳しく、建て主は「選択肢が増える」時代に

大比較検討時代は、建て主の側にさらに大きな変化をもたらしました。日々の情報やイメージがインターネットのフラットな環境で検索され、受け取られることにより、私たちのライフスタイルや趣向はどんどん多様化しています。

 

しかしここでよく耳にする「多様化」とは何でしょうか。実際は何が多様化しているのでしょう。これからの社会で、建て主も建築家も、お互いに納得のいく建物づくりをするためには、この多様化についてじっくり考えることは意味があります。

 

結論から言うと、人口減少により、業界にとっては厳しく、建て主にとっては選択肢の増える、クリエイティブな変化が待っています。人口減少の原因は少子化、晩婚化、未婚化と諸説ありますが、明確な理由は分かりません。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成18年2月推計)」を見ると、右肩上がりで増え続けた日本の人口は、2008年前後をピークに減少に転じました。その急増ぶりと、これからの急減のギャップに驚かされます。

 

日本の近代化が始まった明治時代からこちら、「人口は増加する」のが当たり前でしたから、それを前提にさまざまな法律や制度設計や商慣習は組み立てられてきました。国民年金制度(※)が分かりやすい例です。しかし、これからは人口減少時代に合わせ、そんな前提や制度も変化や改革が求められます。

本連載は、2015年5月1日刊行の書籍『建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける 不動産思考術

建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける 不動産思考術

高橋 寿太郎

学芸出版社

建築・不動産業を渡り歩き、両者のコラボレーションを開拓する著者が、よりクリエイティブな価値を生む建築不動産フロー〈ビジョン→ファイナンス→不動産→デザイン→施工→マネジメント〉を伝授。これがあれば建築家は建て主…

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