今回は、不動産価値にも大きな影響を与える「人口減少」という問題について改めて考えていきます。※本連載では、創造系不動産株式会社・代表の高橋寿太郎氏の著書『建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術』(学芸出版社)の中から一部を抜粋し、「不動産思考」の必要性について詳しく見ていきます。

加速する首都圏と地方の人口差

今後、首都圏はじめいくつかの特定地域以外では、土地等の不動産価値が下がると言われています。地方の人口減少は避けられないためです。そのため、首都圏と地方の人口差はさらに加速します。人口減少による地方自治体の運営や行政サービスの維持は、大きな社会問題(※1)です。

 

[図表] 日本の人口

総務省統計局
「日本の総人口及び、増減率の推移(1920-2050)」より編集
総務省統計局 「日本の総人口及び、増減率の推移(1920-2050)」より編集

 

逆に、地方の魅力を見直すトレンドも多く見られます。地元への愛着、ゆとりのある環境、都会にないライフスタイル。地方の良さをつくり、また発見し、伝える動きが力を増すでしょう。

人口減少時代やデフレ経済は悪いことばかりではない!?

インターネットの興隆と人口減少は、さらなるデフレ(※2)をもたらすという説があります。私たちは、少しでも価格の安い商品やサービスを手軽にインターネットで選べるだけでなく、ネットワーク化した物流網は、より安い日用品から嗜好品までを、スーパーや小売店に出向かずに入手できるようになったからです。

 

しかも人口は減るので、企業の競争は激化します。そして、グローバル企業は少しでも安い人件費や、代替品である機械に求め、物価や給料はさらにデフレ化していくのです。それに抵抗してさまざまな経済・金融政策が実施されていますが、日本がこの20年のデフレ傾向を打破するのは、簡単ではないでしょう。

 

しかし、人口減少時代もデフレ経済も悪いことばかりではないかも知れません。一般消費者の立場から見ると、基本的に、私たちが求めるものに対してその選択肢が多い状況は、良いことです。例えば、地方の土地だけでなく、都市近郊(※3)の土地や建物価格も下がるかも知れません。そうなると、今と同じ費用で、より広く、より高い性能、より良いデザインの建物を手に入れることができるようになるはずです。

 

※1 地方自治体の問題
2014年に発表された通称・増田レポート(日本創生会議発表)によると「2040年までに全国1800の市区町村のうち、896の自治体が消滅する可能性がある」とされ、波紋を呼んだ。

 

※2 デフレ
デフレーションの略。物価が持続的に下落する経済状態のこと。世の中の需要に対して、供給量が多い状態で起きやすい土地等の現物資産の価格、給料が下がる反面、現金等の
金融資産の価値が相対的に高まると言われる。日本は数十年にわたりこの状態が続いてきたが、2015年現在、この状況を打破するための政策が施行されている。

 

※3 都市近郊の人口
三大都市圏(首都圏、関西圏、中京圏)では、まだ人口は増加すると言われているが、その都市圏の中でも、人口の減少が推測されている個別の自治体も多い。

本連載は、2015年5月1日刊行の書籍『建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける 不動産思考術

建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける 不動産思考術

高橋 寿太郎

学芸出版社

建築・不動産業を渡り歩き、両者のコラボレーションを開拓する著者が、よりクリエイティブな価値を生む建築不動産フロー〈ビジョン→ファイナンス→不動産→デザイン→施工→マネジメント〉を伝授。これがあれば建築家は建て主…

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