建て主自身が横断的に情報を入手・検討できる時代
前回の続きです
当然、建築家や建築設計事務所も、インターネットにより変わりつつあります。
例えば家づくりを依頼しようとする建て主は、事前に膨大な住まいの空間イメージを検索し、鑑賞し、比較検討できるようになりました。建築家の公式ホームページやブログをはじめ、建築家プロデュース会社や建築家紹介サイトをチェックし、さらにハウスメーカー、インテリアデザイナー、さまざまなタイプの工務店との仕事の違いや、メリット、デメリットを、事前に検証できます。
つまり、プロではなく消費者である建て主自身が横断的に情報を入手し検討できる、そんな「大比較検討時代」が始まっています。建て主は、素早くインターネットで情報収集する感性を養い、個別のテーマ(例えばキッチン、設備機器、時に床や壁の素材等関心に沿ったテーマ)ではプロ顔負けの情報量を持つことも可能になりました。色んな業種を「横断的に」比較検討する感覚を持っているのは、実は専門家よりも、まずは革新的な建て主です。
ホームページは比較・検討、選択するための判断材料に
そうした彼らをサポートするために、建築業界は横断的なサービスを開始します。
安心力が売りのハウスメーカーが、デザイン力や個別対応力を高める努力を始めます。地域密着の工務店が、デザイナーを起用し格好良いホームページをつくります。また建売メーカーが、建築家にコーディネートを依頼しデザイン性を高めます。建築設計事務所の中には専門誌を出て、一般誌やインターネット媒体で広告展開する所が現れる、そんな時代です。建て主は建築専門誌やデザイン誌だけでなく、自宅のパソコンやスマホからさまざまな会社のデザイン、コンセプト、技術とサービスを確認した上で、「この建築家に任せたい」「この会社の話を聞いてみたい」と、コンタクトを取ります。今やどんな規模の企業、設計事務所にとってもホームページは、建て主が比較・検討、そして選択するための大きな判断材料になっています。
[図表] 『大比較検討時代』の建物づくり
一方、不動産会社も、ホームページで取り扱うマンションや土地等の「物件情報」を常に新しくして、お客様に選んでもらうための努力を惜しみません。単に物件情報を豊富にするだけではなく、それらを分かりやすく、検索しやすく、デザインを良くすることで、他社と異なるアピールポイントを伝える工夫をしています。
世の中は、そうした大比較検討時代の建て主にサービスするように、会社のシステムを変化させていくのです。