今回は、多くの建て主が抱く「家づくりとお金」に関わる疑問などを考察します。※本連載では、創造系不動産株式会社・代表の高橋寿太郎氏の著書『建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術』(学芸出版社)の中から一部を抜粋し、「不動産思考」の必要性について詳しく見ていきます。

建て主が求めるものをじっくり聞く

住宅の建て主なら夫婦や家族の将来像、幸せの形が欲しいと思っています。法人企業ならお客様や世の中に貢献し、社員が誇りを持って働くことができる理想の経営基盤が欲しいと考えています。しかもそれはもはや、一般解ではなく個別解として求められている。それを解く作業には、既にある正解やパターンを示すのではなく、まずはじっくり建て主の話を聞き、そこからオリジナルな答えを導きだせる、クリエイティブな能力が必要とされます。

 

ではその建て主に、自分たちの暮らしの考え方、つくりたい家族像、叶えたい目標、どんな仕事やキャリアを考えるか、それに合う住まい方、空間のイメージ、好きなデザイン…と、聞いてみるとしましょう。

建て主にとってかなり根が深い「お金の不安」

しかし、例に挙げた新中間層の家族の場合、より根本的で堅実な疑問から始まることが多いのです。ダブルインカムで、堅実で、情報に敏感で、デザイン意識が高い、そんな彼らの抱く疑問とは、

 

・そもそも今の時代、家を建てて良いのか?

・郊外は地価が下がると聞いたが、土地は本当に都心に買うべきなのか?

・計画内容が自分たちの収入に見合っている?

・住宅ローンはどうやって借りるの?

・むしろ住宅ローンは借りない方が良いのでは?

・どんな銀行がある?また金利は変動と固定(※1)、どちらが良い?

・住宅ローン控除(※2)や家づくりの際の税金について考えるべきか?

・繰り上げ返済(※3)はすべき?

・親からの援助や、相続については、相談できるか?

 

等々。

 

そう、ほとんどが「家づくりとお金」に関わる疑問です。あふれる希望やビジョンやデザインイメージと同じくらい、その反面に「お金」の疑問があります。つまり、多くの建て主は「お金についてのたくさんの不安」を持った状態で、相談窓口を探して四苦八苦しているのです。しかもその「お金の不安」は、建て主にとってかなり根が深い課題と言えます。

 

[図表] 建て主の悩み

 
 

※1 固定金利・変動金利
金融機関から融資を受け、返済する金額には、金利(利息)が含まれる。その金利が、一定期間変わらないものを「固定金利」、上下する可能性のあるものを「変動金利」と言い、契約者は選択可能。第1回で紹介したフラット35は全期間固定金利のみ。

 

※2 住宅ローン控除
「住宅借入金等特別控除」の略。住宅を、住宅ローンを利用し、購入または建築した場合、給与収入やローン残金に応じて、税金が控除される制度。適用には諸条件がある。

 

※3 繰り上げ返済
ローンを早く完済するか、月々の返済額を少額にするために、契約した額よりも多く返済すること。繰り上げ返済した分の金利がかからないので、金額的なメリットもある。ただし繰り上げ返済をどのように行うべきかについては、契約者個別の状況により、専門家でも意見が分かれる。

 

 

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    本連載は、2015年5月1日刊行の書籍『建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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