前回は、子供や孫の教育費用は「課税控除」の対象となるのかを説明しました。今回は、配偶者が受けられる「相続税の税額軽減」について見ていきます。

法定相続分までは相続税が軽減される配偶者

相子 配偶者はなにか優遇があると聞いてますけど?

 

北井 配偶者は相続人の中でも特別な存在です。相続財産が作られる過程では夫婦が共に助け合うなど大きな役割を果たしてきたはずですから、相続で住まいや老後資金を失うことがないよう特別に大きな軽減枠が設けられています。

 

相子 どのくらいの金額ですか?

 

北井 法定相続分が1億6,000万円までなら1億6,000万円分、それを超える場合も法定相続分までは相続税が軽減されます。

「妻が全額を相続する」という遺産分割は不利!?

相子 それなら配偶者の相続分を目いっぱい多くすれば、相続税はほとんどかからないんじゃないですか?

 

北井 そうですね。たとえば1億円(基礎控除後)の相続財産を妻と子供2人で法定相続分ずつに分けると課税されてしまいますが、妻が全部相続すれば1億6,000万円以下なので相続税は0円になります。

 

相子 じゃあなぜ、みんなそうしないんですか?

 

北井 妻が亡くなったときに子供たちが多額の相続税を支払うことになるためです。

 

相子 なんだー。じゃあ、どっちにしろ支払わないといけないわけなんですね。

 

北井 はい。ちなみに夫婦のどちらかが亡くなったときの相続を「一次相続」、もう片方が亡くなったときの相続を「二次相続」と呼びます。一次相続で妻が夫の遺した相続財産を全額受け取ってしまうと、二次相続で子供たちが巨額の財産を相続することになります。相続人が少なく非課税枠が小さくなる分、相続税の課税対象額が膨らむわけです。一次・二次を合わせた税額を比べると、「妻が全額を相続する」という遺産分割はかえって不利になることが多いのです。

 

本連載は、2016年12月14日刊行の書籍『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続」のことがたった1時間でわかる本

「相続」のことがたった1時間でわかる本

北井 雄大

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の納税資金が足りず資産を手放すことになった、知らぬ間に親が多額の借金をしていた、相続財産の分配について家族間で争いが起こった…。相続では、正しく対策を打っておかなければ、残された家族が大きなトラブルに巻き…

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