公共工事を請け負うには「経営事項審査」の点数が必要
前回の続きです。
なぜこうしたことが常態化しているのだろうか。最大の理由は「売上至上主義」だと思う(図表参照)。建設会社の経営者の多くは基本的には「売上」しか見ていない。私は今まで多くの建設業界の会社を訪問し、1000人以上の経営者や幹部、営業担当者と話をしてきたが、驚くことにほとんどは売上高のことしか話題にしない。
例えば、今年の売上が50億円なら、3年後には60億円にするといった経営目標を語りながら、そこには利益目標がない。いま50億円の売上でいくら利益が出ているという認識が希薄なのだから、将来、売上を伸ばしてどれくらい儲けるのかという発想も抜け落ちているのである。
経営者が売上にそこまでこだわるのは、公共工事の「経営事項審査(経審)」における点数の付け方にも原因がある。
「経営事項審査」とは、業界関係者なら常識だが、公共工事を国や地方自治体から直接請け負おうとする際に必要な資格審査である。
公共工事の発注機関は、入札に参加する建設会社について客観的事項と主観的事項の審査結果を点数化し、ランクを付ける。
客観的事項の審査が経営事項審査であり、「工事種類別年間平均完成工事高」「経営状況」「経営規模」「技術力」「その他の審査項目(社会性等)」について数値化し評価される。
経営事項審査の点数は「売上高」の比重が大きい
私がサポートしているある建設会社で、こんなことがあった。売上高は意識せず、利益を重視した営業や予算管理を行ってもらったところ、売上は2割ダウンしたものの、利益が前年度の赤字から数千万円の黒字になったのだ。
しかし、その会社の経営事項審査の点数はわずかながら下がってしまったのである。赤字が黒字になったのに、経審の点数が下がるというのは理解に苦しむ。経審の点数の付け方において、売上高の比重が大きすぎるのだ。
地方では、住宅工事をメインにしている工務店を除けば、公共工事に依存する割合が高い建設会社は多い。公共工事の入札におけるランクは死活問題だという意識が、当の建設会社はもちろん、取引先の金融機関にも強い。そのため、どうしても売上高を絶対視してしまうのだ。