本連載は、中小企業の補助金申請のスペシャリストで、補助金の申請支援を行う税理士、社会保険労務士、商工会等向け研修の講師なども務める、水谷翠会計事務所・水谷翠氏の著書『税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル 』(第一法規株式会社)の中から一部を抜粋し、補助金制度の概要について解説します。

そもそも「補助金」とは何か?

昨今、多種多様な中小企業向けの補助金が公募されており、経営者の関心は大変高まっています。事業資金に関する相談相手として、あるいは認定支援機関として、税理士が補助金について問合せを受ける機会も少なくないと思います。

 

こうした中で、まずは補助金とはどのようなものかイメージしていただくために、補助金の仕組みや基本的なルールについて解説していきます。

 

(1)補助金※1とは

 

■国の補助金事業の仕組み

国として取り組むべき様々な政策目標について、それぞれの目標に合った施策が実施されます。補助金とは、それらの施策の中でも国が企業、民間団体、個人、自治体などに金銭を直接交付する事業のことをいいます。

 

補助金を交付することにより、企業、民間団体、個人、自治体などにおいて、想定された取組みが広がり、それが政策目標の達成につながる効果を生じさせることが補助金事業2の狙いなのです。

 

[図表1]補助金事業の仕組み

 

※1 補助金のほかに助成金という呼称もありますが、両者に厳密な区別はありません。

※2 国から見ると補助金は国の行う事業の1つであるため、補助金の正式名称が「○○事業」となっていることがあります。

経営者にとって資金負担、投資リスク軽減のツールに

■経営者の視点での補助金とは

経営者の視点においては、補助金とは、事業の様々な局面で資金負担及び投資リスクを軽減することができるツールであるといえます。補助金を資金調達手段と捉えるならば、負債のような返済や利子負担がない点、資本のような経営関与がない点が優れています。

 

[図表2]ビジネスフローと中小企業向け補助金の活用例

 

企業が補助金を受け取ると、同業他社に比べて資金繰りが有利になり、さらに一歩先行く投資を行うことで競争力の強化が可能となります。一方で、補助金の制度上、一定以上の利益が出た場合に返還するというルール※3があることを懸念する経営者もいますが、逆にいえば事業が計画どおりに進まなかった場合に最大の効果を発揮する制度ということができ、やはり補助金は経営者の強い味方であるのです。

 

それ以外にも、補助金が採択されることにより、従業員や取引先、あるいは金融機関等に対してその企業や取り組む事業の信頼度が上がったり、経営者自身にとっても自社の取組みの社会的意義が認められたという自信につながるといった効果も期待できます。

 

また、自社で補助金の申請をするのではなく、補助金関連情報を用いて、例えば補助金申請希望者や採択者に向けたターゲティング広告や、関連する補助金の提案を含めた自社サービスのプロモーション活動※4等を行うといった活用方法もあります。

 

※3 筆者著書『税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル』p6「収益納付」参照。
※4 例えば、HP制作会社においてHP制作費用の補助金が交付される市区町村に重点的にDM展開を行う等があります。

本連載は、2017年5月15日刊行の書籍『税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。無断複製・転用・公開、第三者使用を禁じます。

税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル

税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル

水谷 翠

第一法規

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