今回は、補助金を利用する場合に留意すべき補助金の運用ルールを定めた法律・施行令について見ていきます。※本連載は、中小企業の補助金申請のスペシャリストで、補助金の申請支援を行う税理士、社会保険労務士、商工会等向け研修の講師なども務める、水谷翠会計事務所・水谷翠氏の著書『税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル 』(第一法規株式会社)の中から一部を抜粋し、補助金制度の概要について解説します。

補助金運用の基本的ルールとなる「適正化法」

(3)基本ルール

補助金には多くの種類がありますが、その運用についての基本的なルールは1つの法律「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下、「適正化法」という)」及び適正化法施行令に定められています。

 

この法律には、補助金制度の適切な運用を図るため、申請から決定までの規定や、補助事業の遂行にかかる規定、補助金の返還に関する規定、罰則等の規定が置かれています。

 

まずは補助金共通のルールを押さえ、そのうえで各補助金の固有の趣旨とルールについて公募要領等を確認して理解する必要があります。

補助金申請にあたって知っておくべき重要な基本ルール

■補助金は後払い

補助金は、投資(補助対象となる経費の支出)の後で交付されます。つまり、企業にとっては投資に必要な資金はあらかじめ別に調達する必要があります。補助金の申請を検討している経営者の中には、この点を理解しておらず、受け取った補助金を使って投資を行うことを計画したり、すでに実行済みの投資に対して補助金を申請しようとする方がいますが、いずれもできません。

 

採択されてから事業完了後に補助金を受け取るまでの間に必要となる投資資金については、「つなぎ融資」という制度があります。これは、金融機関が採択者に対して融資を行い、補助金事業が円滑に進むよう支援を行うものです。平成25年11月6日に中小企業庁及び金融庁から、認定支援機関及び金融機関に対しつなぎ融資の円滑化に向けての協力要請※1が行われています。

 

■補助対象となる経費の利用制限

交付決定を受けた後、補助対象経費の配分の変更※2や内容の変更をしようとする場合、事業を中止、廃止もしくは他に承継させようとする場合には、事前に事務局の承認が必要となります。あくまで採択を受けたのは当初の事業計画であり、その当初申請の内容からかけ離れる変更である場合等には承認されない可能性もあります。

 

つまり、当初申請書に記した「事業計画」や「経費明細」は、採択後の事業遂行において、経費の利用に関する内容や金額の制限としての大変重要な意味を持つことになります。

 

次回は、基本ルールの残り3点「収益納付」「不正受給ペナルティ」「税金」について、紹介します。

 

※1 中小企業庁HP「補助金交付までの間の事業資金に対するつなぎ融資の円滑化を図るための要請について」http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sogyo/2013/131106tunagi.htm
※2 費目の変更を行うこと。例えば、申請時に人件費としていた金額を、実際の事業遂行にあたり予定を変更して外注費とすること等。

本連載は、2017年5月15日刊行の書籍『税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。無断複製・転用・公開、第三者使用を禁じます。

税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル

税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル

水谷 翠

第一法規

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