適正化法における「一定以上の利益」の算出方法
前回の続きです。
■収益納付
適正化法においては、国税からなる補助金が一企業の利益になることは好ましくないという考え方があります。このため、補助事業が完了した後5年間において、一定以上の収益が認められた場合には、交付された補助金の額を上限として収益の一部を納付するルールがあります。一定以上の利益とは、下記のとおり計算された基準納付額を超える額のことを指します。
【基準納付額:( B - C ) × A ÷ D 】
上記の式により算出された額から前年度までに収益納付した額を差し引き、正の値であった場合には、その額が当期の収益納付となる。
A:補助金交付額(本事業にて交付を受けた補助金額)
B:補助事業にかかる収益額(補助事業にかかる営業損益等(売上高-製造原価-販売管理費等)の各年度の累計)
C:控除額(補助対象経費)
D:補助事業にかかる支出額(本報告の事業年度までに補助事業にかかる費用として支出されたすべての経費(補助事業終了後に発生した経費を含む。))
上記Bの額の計算において営業損益の額を用いていますので、法人においては収益納付額の計算にあたり役員報酬を控除することができます。一方、個人事業主の場合には、役員報酬という概念はありませんが、事業の利益に本人の給与相当額が利益から控除される調整が加えられ、法人・個人間における有利不利は生じないこととされています。
不正のつもりがなくても…他用途に使えばペナルティ
■不正受給のペナルティ
補助金の不正受給に対してペナルティがあることは誰でも理解しやすいと思います。不正受給、すなわち、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、または間接補助金等の交付もしくは融通を受けた者に対しては、5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、または併科という罰則規定があります(適正化法29条)。
一方で、不正のつもりがない場合であっても適正化法の運用に従わなかった場合にはペナルティを受けることがあります。
例えば、事業の都合あるいはその他何らかの理由で補助金を他の用途に使用した場合には、交付の決定の全部または一部が取り消され、補助金額に加算金を上乗せして返還する必要があります。さらにこの場合には、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、または併科という罰則規定があります(適正化法17条、30条)。また、補助事業等の成果の報告をしなかった場合や、法令に基づく検査に対して適切に応じない場合等には、3万円以下の罰金という罰則規定があります(適正化法31条)。
■税金
受領した補助金は、原則として法人の場合は確定した期に益金に、個人の場合は受領した年の事業所得となり、課税されます。詳細については、筆者著書『税理士のための“中小企業の補助金”申請支援マニュアル』内の「採択後の税務上の取扱い」の項目にて解説します。これは適正化法に定められたものではありませんが、重要な補助金の基本ルールといえます。