解体、売却、修繕…自由度が高い木造アパート
長期にわたって使用し、なおかつ年々劣化していく建物には、減価償却が適応されます。減価償却費は、経費として計上することによって、アパート経営上の税金対策として大きな力を発揮します。ポイントとなるのは、減価償却費が建物の耐用年数によって大きく変わるところです。木造の耐用年数が22年に対し、RC造なら47年にわたって、減価償却されていきます。
たとえば木造とRC造の建物を同じ時期に建て、同時に不動産経営をスタートさせたとしましょう。木造は22年で償却が完了します。そのころになると「そろそろ2回目の大規模修繕をといった話も出てくるので、思いきって解体するのもひとつの手です。土地を売れば購入時と同程度の土地代が戻ってきますし、売却せずまた新しいアパートを建てて経営を続けていくこともできます。
もちろん古さは隠せませんが、解体せず修繕をして経営を続けていくことだってできます。つまり、木造の場合は、さまざまな運用が可能なのです。
一方でRC造は耐用年数が47年ですから、22年では半分程度しか償却が完了しておらず、まだ新しい運用を考えられる段階ではありません。
償却後は新しいタイプのアパートに建て直すのがお勧め
耐用年数が長いというのは、長期間にわたって収入を得られるというメリットがある反面、時代に遅れた物件になってしまいがちというデメリットがあります。
20年ほど前までは、ユニットバスとトイレが別のワンルームは珍しいものでした。導入された物件は注目を集め、多くの入居希望者が集まりました。以降、ユニットバスとトイレが別の物件は急速に増え、今では当たり前の賃貸設備になっています。
反面、ユニットバスとトイレが一緒になったタイプの物件は需要が減り、空室率が高くなっています。さらにトレンドは移り、今はユニットバス・トイレ別は当たり前、さらに独立洗面所が付いている物件が人気を博しています。もしかしたら、いずれユニットバス・トイレ別だけが売りの物件は、見向きもされなくなるかもしれません。
入居者のニーズは時代とともに変わっていきます。もちろん、私たち供給する側も新しいニーズに合わせた物件を提供し続けないといけませんが、とにかく耐用年数の長い物件は、自然と時代に遅れた物件と見なされ、入居がつきにくくなるものなのです。
これが耐用年数の長いRC造の危うさだと思います。私はオーナーに提案することがあります。
「22年経ったら解体して、また新しいアパートを建てればいいじゃないですか」
これが木造の魅力のひとつだと考えます。木造は解体費が安いのですから、22年の償却期間が終わったら、時代に合った新しいタイプのアパートをまた建て直すことがお勧めです。そのほうが入居者は確実に集まりやすいですし、家賃も高く設定でき利回りも高くなります。すでに土地は持っているわけですから、融資を受けるのは上物部分だけ。より効率的な収益が見込める算段です。
低資金で始められ、高利回りを約束し、早い時期にスクラップ&ビルドができる。このような、木造の代謝の良さが、オーナーに末永く豊かさを与えてくれるのです。