今回は、非営利団体における「事業持続可能性」について、具体例をとともに見ていきます。※本連載は、非営利団体のファンドレイジング力(資金調達力)向上事業に従事し、これまで全国200カ所以上のファンドレイジングセミナーに講師として登壇した実績を持つ、ファンドレイジング・ラボ代表・徳永洋子氏の著書、『非営利団体の資金調達ハンドブック』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、非営利団体として事業収入・収益を上げるノウハウを解説していきます。

ターゲットや人件費など複数の要因が影響

前回の続きです。

 

前回紹介した事業について、どのような状況か、持続可能性はどうか具体的に考えてみましょう。

 

1)里山整備で出る木材でペレットストーブ燃料の製造

里山整備の副産物を用いて、製造方法を公開したり、製造現場の見学会などを行ったりしながら事業を展開しています。個人宅にストーブを設置するブームに乗って、オンラインでの直販、ホームセンターなどからの注文も多く、大きな収益を上げています。まさに、ミッションにふさわしい、しかも優良事業です。持続可能性は大です。

 

2)シニアの里山ウォーキングクラブ

ゆとりのあるシニア層をターゲットとしていて、しかも会費制なので安定した収入源になっています。「歩くだけなのに会費を払ってくれる」のは、参加しているシニアがこの土地の里山保護活動に賛同してきた人たちだということと、クローズドなサークルという安心感がシニア層にマッチしたからです。このクラブのメンバーが「子どもたちと里山を歩く会」も定期的に企画してくれて、啓発活動にも貢献してくれています。持続可能性大です。

 

3)子どものための体験学習型キャンプの開催

次世代の里山保護の担い手の育成ということで、ミッションとの整合性は高いとみなされます。しかし、多くの子どもたちの参加が望まれ、全4回の参加をしてもらう前提なので、参加費を低めに設定する必要があります。準備段階からの人件費、広報費、宿泊費用、食費、さらに安全のために多くの職員が引率者として同行するといった経費を積み上げると、収益性は低くなり、場合によっては赤字になる可能性もあり、持続可能性が危ぶまれます。

低収益でも維持可能 or 事業終了を検討・・・この違いは?

4)里山保護活動の歴史を書いた電子書籍

同じく、ミッションとの整合性は高いものの収益が低いのが電子書籍です。研究者や一部の関心層が時折り購入しますが、あまり売れていません。ただ、里山保護活動の歴史を残すことには重要な意味があります。電子書籍なのでほとんどコストもかからないことから、そのまま残しておいてよいと考えられます。持続可能性という点では「そのまま」でしょう。

 

5)ペンション経営

里山保護の拠点としてスタートした合宿所が、現在はペンションとなっています。繁盛していて安定した収入源としての意味は大きいのですが、説教がましくなってリゾート気分が損なわれてはいけないという考えから、あえて里山保護を訴えることもせず、単なる手軽なリゾート施設として存在しているのが現状です。収益が上がっているのでよしとされていますが、それなりの手間と管理体制が必要とされ、自然保護活動に従事したいと考えている担当の職員のモチベーションは高くありません。持続可能性という点では、総会や理事会では、時折りその存在意義が問われています。

 

6)団体ロゴ入りキャップ(帽子)の販売

シニアのウォーキングクラブのメンバーやペンション宿泊者に売ろうと始めましたが、もともと帽子持参で参加する人たちが多く、デザインがよくないせいか、まったく売れていません。在庫の保管に事務所の倉庫を占領しているのも問題です。イベントのお土産にする、会員へのギフトにするなど処分をして、販売事業を終了させることが検討されています。

非営利団体の 資金調達ハンドブック

非営利団体の 資金調達ハンドブック

徳永 洋子

時事通信出版局

全国に10万超あるNPOの悩みの種。「資金獲得のノウハウ」を初めて集大成。全国10万超のNPOの最大の悩み「資金をどう獲得するか?」。その答えを初めて、具体的に書きました。 寄付の依頼には手法があります。イベントに集客す…

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