今回は、非営利団体が「収益事業」を行う際のポイントを見ていきます。※本連載は、非営利団体のファンドレイジング力(資金調達力)向上事業に従事し、これまで全国200カ所以上のファンドレイジングセミナーに講師として登壇した実績を持つ、ファンドレイジング・ラボ代表・徳永洋子氏の著書、『非営利団体の資金調達ハンドブック』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、非営利団体として事業収入・収益を上げるノウハウを解説していきます。

「社会の課題解決」という非営利団体の目的を明確に

前回の続きです。

 

1.Why?

 

なぜ、この事業に取り組むのか。非営利団体の存在目的は「社会の課題解決」ですから、この部分が明確でなければ事業を行う意味がありませんし、共感も得られません。

 

事業の内容によっては団体のミッションとの整合性が希薄に感じられるものがあるかもしれません。非営利団体である限り、本来の活動目的とどう整合性があるかを明確にすることが社会的に求められます。非営利団体は会員、寄付者、助成財団、ボランティアなどの支援者に共感してもらわなくては、活動を行って、社会を変えていくことはできません。

 

新しい事業を立ち上げる際には、「資金を稼ぐ」以上に「大義名分」がないと、支援者を失いかねません。もちろん、事業の中には、「事務所脇の空き地を駐車場にして貸し出す」といった「資金稼ぎの副業」もあり得ます。それでも、「何のためにその資金がいるのか、それを使ってどういう活動を展開していくのか」を明確にしたいものです。

 

2.What?

 

何をするのかという、商品やサービスの具体的な内容です。どんな商品やサービスを提供しようとしているのかが不明瞭では事業として成立しません。

 

3.Where?

 

どこでその事業を行うかということです。具体的は商品やサービスが売買される場所です。これは、「××市内」といった地域を示すこともありますが、昨今では「オンライン上」が取引の場所になる場合もあります。

 

4.Whom?

 

誰に対して、どんな人たちにその商品やサービスを提供するのかを明確にしておかないとなりません。「できるだけたくさんの人に」というのでは、誰にも満足してもらえないことになりかねません。

ボランティア参加も視野に…NPOならではの工夫を

5.When?

 

具体的なスケジュールを立てなければ、時間だけが過ぎていく、あるいは資金調達もできないままに、事業実施が先送りになってしまいます。

 

6.Who?

 

誰がその事業を担当するのか? その事業を進める上で、どういう人がふさわしいのか、現在のスタッフで、能力的にも実行可能なのかを検討します。もし、新たな人材を必要とするなら、そのための時間や経費も計算しないとなりません。また、NPOならではのボランティア参加も視野に入れます。

 

7.How to?

 

一言でいえば「どう成功させるか」です。事業を成功させるためには、どのように団体の強みや独自性を生かしていくかを考えなくてはなりません。同じような事業を同一の地域でやっている団体、あるいは企業があったとして、それらの競合相手とは違うものがなければ事業の展開は困難になります。

 

8.How much?

 

立ち上げの資金、運営の資金、それに対して売上高や利益の目標はいくらにするのか試算します。継続的に実施する事業なら、初年度から3年間くらいの収支目標を立てておかないと、事業の成果の測定もできません。また資金については、それがどのタイミングで必要になるのかを事業計画や売り上げ見込みと合わせて検討し、資金調達計画を立てる必要があります。

 

非営利団体にとっては、最初の「W」の「Why?」が最も重要です。「なぜ、この事業を行うのか」をしっかり考えて、言語化することが大切です。そして、それをきちんと伝えられなかったら、社会からの協力や支援は得られないでしょう。

非営利団体の 資金調達ハンドブック

非営利団体の 資金調達ハンドブック

徳永 洋子

時事通信出版局

全国に10万超あるNPOの悩みの種。「資金獲得のノウハウ」を初めて集大成。全国10万超のNPOの最大の悩み「資金をどう獲得するか?」。その答えを初めて、具体的に書きました。 寄付の依頼には手法があります。イベントに集客す…

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