多くの情報を持つほど、他店に勝つ戦略が立てやすい
前回の続きです。
解決策:「孫子の兵法」は現代のホール戦略にも当てはまる
私がコンサルタントとしてA店に赴任し、最初に行ったのは店長の意識改革でした。
データはただ日々の結果の把握に役立つだけでなく、敵に対抗できる次の一手につながるもの──つまり、データの活用なくして勝利はないということを理解するまで説明を重ねたのです。
ホール営業は戦争になぞらえるとわかりやすくなります。どちらも「敵」がいて勝利が目的です。戦争の場合「敵」は他国ですが、パチンコホールの営業では商圏の遊技客を取り合う他のホールが「敵」にあたります。
戦争になぞらえることの良し悪しはさておき、戦いに勝利する方法(戦略)については、古くから多くの偉人たちによる知恵が遺されています。営業という戦場でも、それらを活用すれば非常に有利に戦いを進めることができるのです。
実際、古くから勝ち負けを左右する重要な要素として「情報(データ)」があげられてきました。相手のことはもちろん、自分や戦場について多くの情報を持っているほど戦略が立てやすい、すなわち勝利しやすいと考えられてきたのです。
今から2500年ほど前の中国で活躍した孫子という軍師をご存知でしょうか。世界的にも有名な彼が書いた『孫子の兵法』には、戦略に活用できる知恵がたくさん詰まっており、今も多くの経営者の愛読書となっています。
中でも有名な言葉に、「彼を知り己を知れば百戦殆あやうからず」というものがあります。「敵のことを知り、自分のことを知れば、百回戦って勝つことができるとは限らないが少なくとも負けることはない」という意味で、勝負事におけるデータの大切さを言い表しています。
先ほどのA店の経営陣も、現代の企業の多くはデータを活用していることや、その重要性についてもある程度理解していました。しかし、パチンコホールに関しては「企業」という意識が少なく、その必要性に気付けずにいたのです。
データを取得・分析できれば、ビジネスへの転用が可能
解決策:データの「取得」「分析」「活用」を正しく理解する
データを正しく扱うためには、「取得」と「分析」、それに「活用」というデータの3つの側面を意識する必要があります。
取得・・・どんなデータをどれだけたくさん取ってくるか
分析・・・取ってきたデータをどう扱って解釈するか
活用・・・分析したデータを実際にどうやって行動に反映させるか
たとえば、A地方の天気について「〇月〇日の気圧は980ヘクトパスカル」というデータが取得できたとしても、当然、これだけの情報ではビジネスに活用することはできません。しかし、このデータを10年にわたって取得し続け、さらに近隣のB地点、C地点の気圧データも取り続けることで、単体では意味をなさなかったデータがだんだん意味をなすものになっていくのです。
3地点の10年間の気圧変化を並べて比較する、相関関係を探る──これがデータの分析です。すると「A地点の気圧が980ヘクトパスカルで、かつB地点、C地点の気圧が1020ヘクトパスカルの時、翌日に雨が降る確率は98%」というような結果が出ました。
こうなると、データのビジネスへの活用が可能です。たとえば、駅前でコンビニを経営している人であれば、「この条件が揃った翌日は、いつもより多く傘を並べよう」と戦略を立てることで、周辺の競合店との差別化を図ることができます。
他にも、適切にデータを「取得」し、「分析」「活用」することができれば、利益向上につながります。私は過去にコンサルティングを行ったホールの具体例をあげながらA店の店長にもデータ活用のメリットを解説しました。すると、店長も「データを使えるようになりたい」と考えるようになり、ジリ貧ホールからの復活を遂げることができたのです。