競争を勝ち抜くには「分析に基づく戦略策定」が必要
コンピュータに蓄積されたデータを営業に活かすためには、「データの加工」が欠かせません。言い換えれば、数字の羅列を「使える形」にして読み解く(データ分析をする)ことで、初めて営業戦略を立てることができるのです。
データ分析ができるようになれば、店舗の強みを活かして効率的に集客する方法や、地域での競争に勝ち抜く方法がわかるようになります。大手のパチンコホールは膨大なデータから「分析に基づく戦略策定」を行って順調な営業を続けているのです。
こう説明すると「大手と同じことをやりたいが、資金も人手も足りないのだから仕方がない」──そう反論する中小ホールは少なくありません。しかし中小ホールでも、高稼働で利益を上げ続けているところはあります。資金も人手もない厳しい状況でも、きっちりと利益を上げ続ける方法はあるのです。
それらのホールがいかにして利益を上げているのか、実際のケースを使って解説していきましょう。
どこに「問題点」があるのかを見出せず・・・
<CASE1>データ分析で売上と粗利を増やした地方都市のジリ貧ホールA店
ある地方都市にあるA店は、店舗数5という小規模会社が営業する典型的なジリ貧ホールでした。
【図表1】A店のプロフィール
現場からのたたき上げでホールを任されるようになった店長(50歳)は、長年の経験と勘に頼る営業しか知らず、データ分析の習慣もありませんでした。もともとは地元をよく知る店長の手腕によって、この地区でも稼働の高い人気ホールだったのですが、急変する時代の変化に対応しきれず、現実的な営業計画を立てられなくなっていったのです。
競合ホールがデータ分析による近代的な営業にシフトする中、後手に回ったA店はジワジワと顧客を失うばかり。オーナー(経営者)もA店が時代から取り残されつつあることには気付いていましたが、問題点がどこにあるのかを見出せずにいました。
「ホール営業にはデータが不可欠」という意識の欠如
ジリ貧ホールの共通症状1:なまじっかな経験と勘がホールのジリ貧を助長する
とはいえ、A店に分析できるデータがなかったわけではありません。店長は毎週の報告会議では、オーナーに胸を張って「ちゃんとデータを取っています」と答えていましたし、実際、最新型のコンピュータの導入によって日々の営業データが蓄積されていました。
ただ、データ分析の術を知らない店長は営業データを取るだけで満足してしまい、その変化をまったくホール営業に活用していなかったため、せっかくの勝機が失われ、A店は誰も見ることのない数値が溜まるばかりのジリ貧ホールとなってしまったのです。
ジリ貧ホールの共通症状2:データの重要性に誰も気付いていない
A店がジリ貧ホールに至った最大の理由は、「ホール営業にはデータが不可欠だ」という意識が店舗管理者に欠けていたためです。業界全体が活況を呈していた時代であれば、利益計画にズレや間違いがあっても、ほとんど下方修正はありませんでした。経験と勘頼りのホール運営でも苦労することがなかったため、緻密なデータ分析は必要なかったのです。
そのため、A店の店長には「自分のやり方でホールを繁盛店にしてきた」という自負があり、データを活用しようという意識がなかったことが問題でした。さらに悪かったのは、会議で指摘をしたオーナーもまた、本質的にはデータの重要性に気付いていなかったということです。データを重要視する業界のトレンドを察知し、現場を任せる店長に対して厳しく指導し、判断をデータ分析に基づいたものに改めるべきでした。
次回は、解決策を見ていきます。