データは長期的な流れに着目してこそ活用できる
<解決策>データ活用の基本は、グラフ化して長期的変化を見ること
A店では営業部長と店長でたいていこんな会話が交わされていました。
営業部長「今日は稼働がやけに低いな」
店長「人気機種が入らなかった上に、前日から雨が続いていますからね」
営業部長「落ち込みがひど過ぎるが、対策を何か考えなかったのか?」
店長「対策と言われても、資金がなければできることなんてありませんよ・・・」
一見、原因を分析している会話に見えなくもありませんが、このような会話をいくら重ねても無意味です。「活用」につながる工夫や知恵は出てこず、ただ現状を嘆いておしまいです。
しかし、持っているデータという面に限れば、ジリ貧ホールと大手ホールに差はありません。現在ではどのホールでも100%、ホールコンピュータが導入されていて、常に自動的に必要とされる情報が取得され蓄積されています。
A店でも計数管理をしているのですから、売上、利益、割数などのデータは保有しているはずです。資金力や組織力と違い、「データの取得」という面ではジリ貧のA店と大手ホールにはほとんど差がないのです。にもかかわらず、A店で発展的な「活用」へとつながる分析ができていないのは、そもそも「分析」の意味を取り違えているからです。
前述の例で営業部長と店長が取り上げているのは、1日のみの短期的な結果です。1日の出来事だけをもとに分析を行っても、出てくるのは意味をなさない「データのかけら」だけです。
取得しているデータをもとに行う「分析」は、短期的な動きではなく長期的な流れに注目して初めて「活用」につなげることができます。病気治療と同じく、原因が見つかって初めて効果的な対策を打つことができるのです。
そのために重要な工夫として「グラフ化する」という方法があります。
データを漫然と見つめていても、分析につなげることは難しいものです。そこで、たとえば時系列に沿った変化をグラフにすることで、「いつどんな変化が表れたのか」「ある数値の変化は別のどんな数値や出来事と連動しているのか」が見えてきます。
グラフ化により、売上低迷の原因の類推・推測が可能に
<解決策>グラフ化したデータと「頭取り」データから分析する
さっそくA店では、店長が稼働と時間軸をもとにグラフ化をしてみたところ、大きな落ち込みがほぼ1週間に一度、しかもなぜか水曜日に決まって起きていました(図表参照)。そして大きく上がる日は割と不規則で、こちらは曜日に法則性は見出せませんでした。
[図表]A店の稼働の推移
営業部長「大きな落ち込みがほぼ1週間に一度。しかもなぜか決まって水曜日だな・・・」
店長「そうですね。なぜ水曜日なんでしょうか」
営業部長「水曜日、水曜日・・・水曜日に何かあったかな?」
店長「ウチのイベント強化日は木曜ですが・・・ん?水曜日と言えば競合Y店の海海パラダイス感謝デイの日、しかも1週間に一度というのも重なりますね」
営業部長「なるほど。それだな。とすると、後はこの大きく売上が上がる日は何を意味するんだろう」
店長「ひょっとするとこれも競合ホールと何か関係があるのかも。ちょっと調べてみます」
A店を含め、ほとんどのホールでは商圏内の競合ホールを回って「頭取り」をしているはずですから、他ホールのデータも持っています。大手が持っていてジリ貧ホールが持っていないのは「顔認証システム」を使った顧客管理情報くらいです。
他ホールの「頭取り」データから上がってきた報告を見て、営業部長と店長は次のような会話を交わしました。
営業部長「さすがに大型版権機種の入替となると、Y店はたくさん入ってるな」
店長「そうですね、とても敵いません。ただ、調べてみてわかったのですが、ウチの売上が不規則に上がる日はY店ではなく、どうもM店の休業日と重なるようです。Y店の休業日はそれほど売上に変化はありませんでした」
営業部長「なるほど。すると、イベントのない日の遊技客はM店からの流入と考えられるな」
A店に限らず、稼働のデータがある日突然上がったり下がったりすることはよくあります。A店の場合、この理由は前述のようなものでした。商圏外であまり気にしていなかったホールの休業日は稼働が上がり、別の日には大型ホールが大規模な入替をしたので下がったのです。このように日々の稼働データと他ホールの動向を比較すれば、原因の類推・推測が可能となります。