「失業者の発生」と「貧富の差」
前回の続きです。
(2)失業
資本主義の第二の欠点は、失業者が出るということです。多くの人は生産手段を持っておりません。だから、企業に雇ってもらって所得を得るしかありません。しかし、企業が人を雇うか雇わないかはまったくの自由です。景気が良いとき企業はたくさんの人を雇いますが、不景気になれば余剰となった労働者を解雇します。その結果、大量の失業者が発生し、本人および家族は路頭に迷います。資本主義経済の下では、労働者は失業という恐怖に絶えずさらされています。
(3)貧富の差の拡大と労働問題の発生
資本主義の第三の欠点は、貧富の差が拡大するということです。資本主義社会の大原則の一つに契約自由の原則があります。これは、個人が自分の自由な意思で、誰とでも契約を結ぶことができる原則をいいます。会社と個人が労働契約を結ぶ際に、1日何時間働いて、給料をどれだけもらうかは、双方の自由意思で決定することができます。会社側は利益を上げるために、労働者をなるべく低賃金で長時間働かせます。その結果、経営者のなかには成功をおさめ、多くの財産を築く者もあらわれました。
低賃金、長時間労働…「労働組合」が設立された背景
一方、労働者が生活の糧を得るためには、会社に雇ってもらって働くしか方法はありません。したがって、契約交渉は、企業側が有利な立場で進めることができます。この結果、低賃金、長時間労働の契約が結ばれました。より安価な未熟練労働者が求められるようになり、子どもや婦人までも駆り出されます。1832年のイギリスの報告書には、「イギリスの少女たちは朝の3時に工場に行き、仕事を終えるのは夜10時か10時半。19時間の労働時間のあいだに与えられる休憩は、食事などの1時間だけだった」という証言があります。労働環境も劣悪で、綿織物工場から発生する塵芥(じんかい)で多くの労働者が肺疾患で亡くなっています。炭坑や鉱山は最も危険かつ条件の悪い働き場所で、そういうところでもたくさんの子どもたちが働かされました。
こうした労働問題を解決するために設立されたのが労働組合です。当初、労働組合は非合法とされましたが、その後、認められるようになり、賃金の引き上げや労働時間の短縮に重要な役割を果たしました。