今回は、19世紀、資本主義の発展によって生じた問題点について紹介します。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

「失業者の発生」と「貧富の差」

前回の続きです。

 

(2)失業

資本主義の第二の欠点は、失業者が出るということです。多くの人は生産手段を持っておりません。だから、企業に雇ってもらって所得を得るしかありません。しかし、企業が人を雇うか雇わないかはまったくの自由です。景気が良いとき企業はたくさんの人を雇いますが、不景気になれば余剰となった労働者を解雇します。その結果、大量の失業者が発生し、本人および家族は路頭に迷います。資本主義経済の下では、労働者は失業という恐怖に絶えずさらされています。

 

(3)貧富の差の拡大と労働問題の発生

資本主義の第三の欠点は、貧富の差が拡大するということです。資本主義社会の大原則の一つに契約自由の原則があります。これは、個人が自分の自由な意思で、誰とでも契約を結ぶことができる原則をいいます。会社と個人が労働契約を結ぶ際に、1日何時間働いて、給料をどれだけもらうかは、双方の自由意思で決定することができます。会社側は利益を上げるために、労働者をなるべく低賃金で長時間働かせます。その結果、経営者のなかには成功をおさめ、多くの財産を築く者もあらわれました。

低賃金、長時間労働…「労働組合」が設立された背景

一方、労働者が生活の糧を得るためには、会社に雇ってもらって働くしか方法はありません。したがって、契約交渉は、企業側が有利な立場で進めることができます。この結果、低賃金、長時間労働の契約が結ばれました。より安価な未熟練労働者が求められるようになり、子どもや婦人までも駆り出されます。1832年のイギリスの報告書には、「イギリスの少女たちは朝の3時に工場に行き、仕事を終えるのは夜10時か10時半。19時間の労働時間のあいだに与えられる休憩は、食事などの1時間だけだった」という証言があります。労働環境も劣悪で、綿織物工場から発生する塵芥(じんかい)で多くの労働者が肺疾患で亡くなっています。炭坑や鉱山は最も危険かつ条件の悪い働き場所で、そういうところでもたくさんの子どもたちが働かされました。

 

こうした労働問題を解決するために設立されたのが労働組合です。当初、労働組合は非合法とされましたが、その後、認められるようになり、賃金の引き上げや労働時間の短縮に重要な役割を果たしました。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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