今回は、資本主義の欠点「企業による独占」という問題について見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

1社ですべての生産を行えば莫大な利益が・・・

前回の続きです。

 

(4)独占

 

資本主義の第四の欠点は、独占が形成されることです。1社ですべてを生産する状態を独占、数社でほとんどを生産する状態を寡占といいます。いったん独占が形成されると、競争相手がいないため、高い価格(=独占価格)をつけることが可能になります。その結果、企業は莫大な利益を手にすることができます。

 

また、競争が行なわれなくなると、品質を向上させる誘因も失われます。企業はそうした独占的地位を手に入れるため、時にはダンピング(生産コスト以下での安売り)をして同業者を叩きつぶし、そのあと価格をつり上げることもありました。こうした独占の弊害は、19世紀後半のアメリカやドイツで多く見られました。

 

独占の弊害を防ぐために、独占を制限する立法措置がとられましたが、いずれも実行力に乏しく、独占資本のなかには国家権力と結びつき、海外侵略・植民地獲得の黒幕として大きな力を発揮した企業もありました。

1日12時間以上働かされていた19世紀の米国労働者

5月1日は、メーデーとして、世界的に労働者の祭典の日とされています。その起源は、1886年5月1日に、アメリカの労働組合が8 時間労働制を要求してストライキを行なったことに始まります。当時の労働者は、低賃金で1日12時間以上働かされるのが当たり前でした。

 

これに対してアメリカの労働者は「8時間は労働のために、8時間は休息のために、そして残りの8時間は自分たちの自由な時間のために」という主張を掲げて立ち上がったのです。

 

日本で初めてメーデーが行なわれたのは1920年でした。その後一時中断はありましたが、第二次世界大戦後復活し、メーデーは現在も続けられています。ただ、近年は労働組合の力が弱くなり、歴史が後戻りしているように思われます。

 

[図表]1920年に行なわれた日本初のメーデー

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

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南 英世

ベレ出版

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