今回は、地価バブルや深刻な公害など、中国で起きている問題を見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

バブル圏に達した地価は「破裂」の危険性も

(2)土地バブルの破裂

 

社会主義市場経済を掲げる中国の土地(底地権)はいまも国有です。中国で土地の売買という場合は、土地の使用権(70年)を売買することを意味します。改革開放以来、所得格差拡大の原因の一つは不動産売買によるものでした。なかには数年で10倍以上に高騰した地域もありました。

 

不動産価格がここまで上昇した背景には、経済成長にともなう購買力の向上、都市への人口流入、強い持ち家志向、不動産に代わる投資先が乏しかったこと、といった要因が挙げられます。しかし、中国の地価はすでにバブル圏に達しており、バブルが破裂する危険性が高まっているといわれています(図表)。

 

[図表]中国の地価動向

(資料:経済産業研究所)
(資料:経済産業研究所)

進む大気汚染・・・北京五輪では周辺の工場が操業停止に

(3)環境問題の深刻化

 

中国が経済発展を遂げれば、必然的に地球規模の環境問題が起きます。いま自転車に乗っている13億の人々がみんな自動車を乗り回すようになれば、「地球が持たない」と、かつて鄧小平が語ったことがあります。

 

いまの中国の環境問題の状況は、約50年前の日本の状態に似ています。日本が東京オリンピックを開催した1964年、日本では公害問題が深刻になっていました。北京オリンピックが2008年に開かれましたが、このとき中国政府は大気汚染を防止するため、オリンピック開催期間中は北京市内の150余りの工場の操業を停止させたと伝えられています。

 

人権意識が希薄な中国といえども、環境問題への取り組みはもう待ったなしの状態に来ています。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

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