今回は、18~19世紀の「資本主義」発展の歴史と、そこで露呈した欠陥について見ていきます。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

資本主義の発展に寄与した「株式会社」という企業形態

スミスは、「資本主義はたいへんすぐれたシステムであるから、放っておいてもうまくいく」と、楽観的に考えました。実際、利己心を肯定したことで、18世紀から19世紀にかけて資本主義は大いに発展しました。綿工業から始まった産業革命は、やがて大量生産された製品を運ぶために、蒸気船、蒸気機関車、鉄道建設といった交通革命を呼び起こします。それにともない、鉄や石炭産業、鉄鋼業も飛躍的に発展します。

 

こうした資本主義の発展に大いに貢献したのが株式会社という企業形態でした。なぜなら、株式会社は必要とされる資本金を小さな単位に分割し、小規模な出資者を多く募ることによって、大量の資本を集めることができたからです。万一、会社が倒産しても、出資者は出資金さえあきらめれば、それ以上の責任を追及されません。出資者のリスクを分散できるという特徴を持つ株式会社は、19世紀後半から重化学工業が発展しはじめると急速に増加していきました。

 

[図表1]イギリスの経済活動指数

荒井政治ほか『概説西洋経済史』有斐閣より
荒井政治ほか『概説西洋経済史』有斐閣より

一定の周期で発生する「恐慌」は資本主義の最大の欠点

ところが、19世紀になると、資本主義にも多くの欠陥があることが次第に明らかになってきます。政府の介入を極力排除し、すべてを市場にまかせた結果、「恐慌」「失業」「貧富の差の拡大」「独占」「労働問題」といった弊害が次々に生じたのです。

 

(1)恐慌

一般に、企業が「何を」「どれだけ」作るかは自由です。一方、消費者には買う自由もあれば買わない自由もあります。したがって、生産した財・サービスが売れ残るということは当然起き得ます。売れ残りが出れば企業は儲かりません。そうした企業がたくさん出てくれば、不景気になります。好況局面で突然起きる深刻な景気後退は「恐慌」と呼ばれます。恐慌は資本主義の最大の欠点といっても過言ではありません。

 

世界最初の恐慌は1825年にイギリスで発生しました。その後、恐慌は多くの資本主義国で見られるようになります。しかも、恐慌の発生には、なぜか10年前後の一定の周期性(=景気循環)が観測されるのです(図表1、2)。恐慌のなかで一番深刻だったのは1930年代に起きた恐慌で、これには特別に「世界恐慌」という名前が付けられています。通常、世界恐慌といえば、1930年代のこの恐慌を指します。

 

[図表2]恐慌年表

『近代経済学講座・基礎理論編』有斐閣より
『近代経済学講座・基礎理論編』有斐閣より

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

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南 英世

ベレ出版

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