今回は、中国が回避したい「対米関係ワーストシナリオ」について探ります。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年夏号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、トランプ大統領の政策と、それによる世界マーケットへの影響を読み解きます(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

「人民元の下落」を止めるために躍起となる中国

中国の外貨準備高は2月に増加したものの、中国においては為替介入が行える実質的な外貨準備とされているのは米国債保有額である。

 

中国の米国債保有額は2016年7月以降減少ピッチが加速、12月は7カ月ぶりに前月比で増加となったものの、1月には再度前月比で73億ドルの減少となっている。加えて、中国が保有米国債を預託していると指摘されているベルギーの保有残高も82億ドル減少している。

 

2月も中国はわずかに増加したが、その分ベルギーは減少している。資金流出に備えた動きが強まっているものとも捉えられよう。

 

実際、中国では2016年以降、人民元の下落に歯止めをかけるため、企業や銀行に対する資本規制を強化してきているが、2016年末以降は、北京では流出額を流入額の8割までに制限するなど指導を一段と強化している。個人に対しても、2017年に入ってからは外貨両替の際に申請書の提出を求めるなどの規制を強化しているもよう。

 

「北朝鮮への圧力強化」を米国から迫られる中国

トランプ大統領の通商政策次第では、中国景気の先行きに対する警戒感が強まることになり、一段の資金流出も避けられなくなろう。貿易決済に占める人民元の比率は2015年の26%から2016年には18%にまで低下、銀行間決済シェアも2.3%から1.7%に低下している。

 

2015年11月にSDR(後述)への採用が決まって以降も、人民元の信任はほとんど高まっていない。SDRとはIMF(国際通貨基金)が加盟国の外貨準備資産を補完する手段として創設した国際準備資産のことだ。

 

従来のドル、ユーロ、ポンド、円に加え、2016年10月に人民元も構成通貨に採用された。SDR採用→人民元の地位向上→AIIB(アジアインフラ投資銀行)による人民元建て投融資の拡大→国内過剰設備の解消といった好循環への道筋はまったく見られていない。

 

また北朝鮮の暴走を止めるためには中国の協力が不可欠で最も効果的と見られている。そのため、現在、トランプ大統領に北朝鮮への圧力をかけるように迫られている状況といえる。

 

ただ、中国の圧力によって北朝鮮の「核廃棄」、さらには、韓国を中心とした朝鮮半島統一が実現すれば、北朝鮮にも米軍が駐留することになる。経済面での壊滅的な打撃は避けられても、軍事面では大きく劣勢に立たされることになろう。これは中国にとってのワーストシナリオと考えられる。

FISCO 株・企業報 2017年夏号 今、この株を買おう

FISCO 株・企業報 2017年夏号 今、この株を買おう

株式会社フィスコ

実業之日本社

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