なぜ相続税対策は「生前」から考えておくべきなのか?

平成27年の税制改正を契機として、より多くの人にとって関心事となった「相続税」の問題。本連載では、弁護士である著者が実務経験を踏まえ、相続税の基礎知識をわかりやすく説明していきます。

平成27年の税制改正で相続税の納付が必要な人が倍増

人が死亡して、「相続」が発生しても、平成26年までは、相続税の申告・納付が必要なケースは、約4パーセント、すなわち100件に4件程度に留まっていました。100件のうち、96件は相続税の申告・納付の問題が生じませんでした。しかし、平成27年1月1日より、相続税の基礎控除額が4割もカットされることとなりました。

 

すなわち、平成26年までは、遺産が「5000万円 + 1000万円 × 相続人の数」を超える場合に初めて相続税の申告・納付が必要だったのが、平成27年からは、遺産が「3000万円 + 600万円 × 相続人の数」を超える場合には、相続税の申告・納付が必要となりました。

 

例えば、妻と子供2人が相続人の場合、平成26年までは、8000万円を超える遺産がある場合に初めて相続税の申告・納付が必要だったのが、平成27年からは、4800万円を超える遺産があれば相続税の申告・納付が必要となったのです。これによって、平成27年は、「相続」が発生して、相続税の申告・納付が必要なケースが約8パーセントとなり、倍増したそうです。

 

相続税の申告・納付は、被相続人の死亡の翌日から10か月以内にしなければならず、これを怠れば、無申告加算税や延滞税を課されるばかりか、「配偶者控除」や「小規模宅地の評価減」等の優遇措置も受けられなくなります。

相続税の納付期限は、被相続人の死後10ヵ月以内

相続税の申告・納付は、被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署に、遺産分割協議書や戸籍謄本等を添付して、相続人全員で申告書を提出するのが通常ですが(下記図表)、相続人間の遺産分割協議が未了で、相続人間で争いがある場合には、各相続人が単独で、法定相続分で相続したことにする申告・納付のやり方も可能です。

 

この場合には、後に遺産分割が成立した場合には、その内容に従って、修正申告等をすることになります。相続税の申告が必要なのは、前述のように、遺産が基礎控除額を上回る場合だけですが、申告が必要なケースでは、被相続人の死亡の翌日から10か月以内に、相続税の現金納付も必要となります。期限までに納税資金を用意できない場合には、「延納」や「物納」の制度がありますが、「延納」の場合には、延納税額に見合うだけの担保提供が要求されており、「延納」期間中は「利子税」を納めなくてはなりません。

 

「物納」は、「延納」によっても金銭で納付することが困難な事情があり、物納に適する財産がある場合に限られます。「延納」「物納」共に、相続税の申告・納付期限内に申請して、許可を得た場合に認められます。死後、相続税の申告・納付が必要となると思われるケースでは、被相続人の生前から、相続税対策も必要となります。

 

[図表]相続税の申告書

 

久恒三平法律事務所 所長
弁護士

中央大学法学部卒業。東京弁護士会所属。久恒三平法律事務所を主宰し、広く民事・家事・商事・刑事事件に対応している。元東京水産大学講師、日本弁護士連合会交通事故相談センター嘱託。現在、東京地方裁判所民事調停委員、法務省人権擁護委員の他、企業・自治体の顧問弁護士を務める。

著者紹介

連載大切な家族のために学んでおきたい「相続税」のキホン

本連載は、2017年4月25日刊行の書籍『一番正確で一番わかりやすい 相続と遺言と相続税の法律案内 改訂版』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

一番正確で一番わかりやすい 相続と遺言と相続税の法律案内  改訂版

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久恒 三平

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな人でも必ず経験する法律問題、それが「相続」です。 近年、注目度がさらにアップした「相続」問題。今回は、2016年12月の最高裁決定を踏まえた最新情報も満載の改訂版です。 相続問題が発生してから初めてプロに相談さ…

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