養子縁組で「相続人の数」を増やす
相続税の申告・納付が必要なのは、遺産額が「基礎控除額」を上回る場合のみです。そこで、相続税対策として、「基礎控除額」を大きくすることが考えられます。
「基礎控除額」は、「3000万円 + 600万円 × 続人の数」で算定されるのですから、「相続人の数」を増やせば、基礎控除額が大きくなります。
「相続人の数」を増やす方法として、相続人でない長男の嫁や孫と養子縁組をするやり方があります。
この点、「相続税対策」の養子縁組は無効ではないかが問題とされていましたが、本年(平成29年)1月、最高裁判所は、養親になる者と養子になる者が自ら署名・捺印した「養子縁組届」を役所に提出している以上、それが「相続税対策」目的であったとしても、有効な養子縁組となる旨判示しました。
しかし、「基礎控除額」を算出する際に法定相続人に含めることのできる養子の数は、相続人の中に「実子がいる場合は1人」、「実子がいない場合は2人まで」という人数制限がなされています。
言わずもがなですが、「相続税対策」としてなされた養子縁組も有効であり、養子となった者は、被相続人の法定相続人となり、他の相続人とともに相続権を有します。この相続権を有する相続人になるのには、人数制限はなく、すべての養子が、実子と平等に相続権を有することになります。
現金で不動産を購入し、賃貸に出すという手も
相続税対策で大切なのは、とにかく「正味の遺産額」を少なくすることです。正味の遺産額が基礎控除額を下回った場合には、相続税の申告そのものが不要となります。
正味の遺産額を減少する方法としては、例えば、前述のように、不動産は時価の7〜8割で評価されるのですから、現金で不動産を購入することが考えられますし、さらに、その土地・建物を他人に賃貸することが考えられます。しかし、他人に賃貸した場合、借りた人には「借地権」「借家権」が発生し、その土地・建物の利用・処分等が制限されることも理解しておかなくてはなりません。
「正味の遺産額」を少なくすることが一番の「相続税対策」になるのですから、被相続人としては、生前に、その財産を使うか、贈与すればよいわけです。