今回は、「東京都現代美術館」の展望について探っていきましょう。※本連載は、株式会社ギャラリーオリムの代表取締役で、アートディーラーとして活躍する三浦利雄氏の著書、『絵(エッ)、6億円が100億円に―美術品の経済的価値を問う』(ギャラリーステーション)の中から一部を抜粋し、美術品の経済的価値と、日本の美術館が直面する課題について探ります。

「東京都現代美術館」への質問状

この本のメインテーマの起因となった、リキテンスタインの「ヘアリボンの少女」を所蔵している、東京都現代美術館にも、現状についての話を聞こうと思って訪ねてみようとしたが、時間の調整が付かず、文書によって質問を出して欲しいということになり、こちらから3点の質問をした。

 

「東京都現代美術館がこれまでに購入した、リキテンスタイン、フランク・ステラ、ブライス・マーデン、エリック・フィッチェル、デ・クーニングなど、当時としては、高額な購入でしたが、現在では入手ができないほどのクオリティーの高い価値のある作品となっています。そういう作品を所蔵していることによる、美術館としての波及効果、経済効果などを、実感することはありますか。」

 

「現在、新しい作品の購入が難しい状況になっていますが、現代美術館として、現代の作品を収集していかなくては、エンジンを捥がれた片肺飛行のような状態だと思いますが、その点に関して如何お考えでしょうか。美術館の運営は上手くいっているのでしょうか。」

 

という2つの質問に対しては

 

「収蔵品の収集にあたっては、〈東京都現代美術館美術資料収集方針〉に基づき収蔵しております。収集した作品は、当館常設展で展示するほか、国内外への貸出等を通じて、多くの方々から親しまれています。今後も適切な収蔵と活用に努めてまいります。」

 

という回答。

「リニューアル後の展開については、未定です」

三つめの質問、

 

「来るべき東京オリンピックにむけての展開、具体的なプランはできていますか。インバウンド、訪日外国人に対して、日本の現代を知ることができる〈現代美術館〉として、東京都現代美術館は重要な位置にあると思いますが、どのような展開が予想されますか。また、美術館運営に対する行政の方針に対する、ご意見をお聞かせください。」

 

に対しては、

 

「リニューアル後の展開については、未定です。現在、2020年の東京オリンピックに向けてプログラムを検討しております。」

 

という、誠に簡素な回答(※1)が返ってきただけだった。

 

(※1)簡素な回答・・・ニューヨーク近代美術館では、約500人の職員と、ボランティア約100人がいる。そして毎週のように、今後の企画を、その分野のプロがプレスリリースとして発表している。

 

現在、リニューアル中で忙しいのかもしれないが、なぜか、東京現代美術館の現状を象徴しているような、そんなやり取りのような気がした。説明責任というような堅苦しいことをいう気はないが、なぜか力が抜けた。

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