高度経済成長期に急増した「箱もの」美術館の功罪

今回は、高度経済成長期に急増した「美術館」の問題点と、今後の課題について見ていきます。※本連載は、株式会社ギャラリーオリムの代表取締役で、アートディーラーとして活躍する三浦利雄氏の著書、『絵(エッ)、6億円が100億円に―美術品の経済的価値を問う』(ギャラリーステーション)の中から一部を抜粋し、美術品の経済的価値と、日本の美術館が直面する課題について探ります。

80年代~90年代に発生した美術館建設ラッシュ

日本では美術館建設ラッシュと言われた時代が、ちょうどバブル経済の時期と重なる80年代から90年代中旬まで続いた。高度経済成長を続けた日本の社会は、各地に美術館(※1)を誕生させ、作品を購入する力を持っていた。

 

(※1)美術館・・・博物館(美術館)の役割「資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮のもとに一般公衆の利用を供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行う機関である。博物館は公民館、図書館とともに社会教育機関、生涯学習機関の一つであり、学校教育と連携しながら国民の教育発展に寄与しようとするものである。」1951年に制定された博物館法には、このように定義されている。

 

まず80年代は第一次美術館ブームと言われ、県立、市立など各地域の中心館としての機能を持つ多くの美術館が誕生した。この連載で取りあげる名古屋市美術館もこの時期のオープンになる。

 

その他では岐阜県美術館、三重県立美術館、滋賀県立近代美術館、岡山県立美術館など地方自治体の美術館や、今は閉館してしまったがデパート系のセゾン美術館などが挙げられる。

 

そして第二次美術館ブームが90年代にもあり、ここでは、先述の東京都現代美術館のような大型美術館や、名古屋ボストン美術館、デパート系の東武美術館、松坂屋美術館などがオープンしている。

 

東武美術館は、すでに閉館してしまったが、とにかく、美術館という「箱もの」が各地に急増した時代があった。

お荷物扱いされながら、良い美術品をしっかり収蔵

しかし経済力に翳りが見え始めると、私立の特にデパート系はいち早く閉館した美術館が目立った。さすが自治体の美術館は簡単に撤退できなかったが運営予算や購入予算が削られるという状態を見せるようになった。

 

経済にゆとりがあるうちは豪華な箱ものを造り、少し景気が悪くなるとお荷物のように扱う文化行政の計画のなさを責める論調が見られるが、私の視点からすると、そうした状況の中でも日本の各美術館は、素晴らしい資産といえる美術品をしっかりと収蔵(※2)してきていると微笑ましい見方もできる。この事実をしっかりと確認したいというのが本連載の目的でもある。

 

(※2)収蔵・・・日本の公立美術館の平均収蔵作品数は約7000点。

 

そうしたもう一方の経済的な資産価値という現実に目を向けて、美術館というものを、この時代の中でもっと積極的に展開する方向性を持ってもいいのではないだろうか。

株式会社ギャラリーオリム 代表取締役

1958年大阪市生まれ。大阪芸術大学デザイン科卒業。1989年大阪、東京の画廊を経て、東京日本橋にギャラリーオリムを開廊。2013年中央区新富町に自社ビルギャラリーを開設。現在、全国美術商相互会会員、日本版画商協同組合会員、現代美術商協同組合会員、関西美術商協同組合会員、協同組合美術交友会会員。

著者紹介

連載美術品の経済的価値&日本の美術館が直面する課題

 

絵(エッ)、6億円が100億円に―美術品の経済的価値を問う

絵(エッ)、6億円が100億円に―美術品の経済的価値を問う

三浦 利雄

ギャラリーステーション

「芸術の普遍的価値よりも、金融商品としての作品の方が、より早くダイナミックな動きをすることを知るべきである」 芸術を愛するが故に、美術館運営・美術業界の在り方に対して、画商があえて本音で語ります。すべてのアート…

 

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