今回は、厳しい運営を強いられている美術館が存続するための条件を見ていきます。※本連載は、株式会社ギャラリーオリムの代表取締役で、アートディーラーとして活躍する三浦利雄氏の著書、『絵(エッ)、6億円が100億円に―美術品の経済的価値を問う』(ギャラリーステーション)の中から一部を抜粋し、美術品の経済的価値と、日本の美術館が直面する課題について探ります。

美術館側が積極的に「作品の評価額」を集計すべき

美術館では作品収蔵目録をしっかりと作って発表しているが、評価額を付けているところは皆無だ。

 

作品を金額に換算するというのは行儀の悪い商人に任せておこうという文化的な上品さがあるのは当然だ。しかし、もし現在の評価額という集計が出たならば、美術館というものに対する一般の方の見方が変わるのではないだろうか。

 

美術館という施設は、常に税金を無駄遣いするだけで、黒字は望めない事業だというイメージが強いと思うが、逆に、収蔵品が利益を生みだしているという事実を知れば、どのような反応になるのだろうか。

 

私は決して美術品を投機的な世界として位置づけしようとしているのではなく、一流の優れたアートをコレクションしていれば、そうした価値は後から付いてくるということを言いたいのだ。

美術品の「価格の変遷」を人々に公表する

「モディリアーニの作品は購入した時点の数十倍になっているように、そうした集客力のある作品を今買おうとしたら、相当な金額を用意しないととても買えませんよね。購入予算が削られて、ほとんど予算のない現状からいうと、そうした作品の購入はとても無理だということになりますよ」

 

美術館の副館長として厳しい現状の中で活動している深谷克典氏は、こうした見方をしている。

 

経済成長期は美術館も購入予算が付けられ、名古屋市美術館では開設時の20億円の予算の後でも、毎年2億円の購入予算が10年間継続して付けられていた。その価格では代表的な作品は無理だとしても、美術館の方向性に合った作品を購入していくことはできる。そうでなければ若手作家や時代を反映した作品を収蔵することはできない。しかし、現在は購入予算はわずかに数百万円でそれすら難しい。

 

名古屋市美術館
名古屋市美術館

 

全国の美術館の現状はどこも同じように厳しい。あの東京都現代美術館も現在は、購入予算がゼロに近いというが、もっと小さな自治体を考えれば、より厳しい現状となっているのは頷ける。美術館の存続自体が危ぶまれているところすらある。

 

こうした足元をみて活動を停止するのではなく、資産的な価値が考えられるこれまでの展開を見直して、もっと美術品を積極的に購入する美術館がでてこないだろうか。こういう時代だから逆に、そうした発想が浮かんでこないだろうかと、私は考える。

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