バリ不動産の購入者層・投資規模は幅広いが…
バリ島不動産におけるローカル向けビジネスの顧客対象は、低所得、中所得、高所得層と法人があります。顧客の購入目的も、バリ島在住者の実需のほか、大都市在住者の投資があり、開発規模も様々。そのビジネス範囲は幅広いものです。
とは言っても、不動産ビジネスの商品は土地と建物なので、対象の顧客・投資の規模は別にして、その目的は「土地を売る」か「土地建物を売る」に限られ、ビジネスは下記の3つとなります。
①土地を買って、土地だけを売る
②土地を買って、建物を建てて売る
③すでに建っている土地建物を買って、転売する
不動産はビジネスの仕組みだけ見ると単純なのです。しかし、商品にするまでの仕上げ方が単純・簡単ではありません。仕組みが単純なだけに、「いかに安く、商品を仕上げるか」が難しいのです。
土地、あるいは土地建物をどのようなルートで仕入れるか、いくらまでなら仕入れてもいいのか、これがポイントです。ビジネスは「誰に、何を売るか」が基本です。「いくらで売れるのか」が分かれば、買ってよい価格も分かるのです。そこでまず、買い手の状況について考えてみましょう。
現在、バリ島の住宅ローン金利は原則として年7.75%です。ローン年数は原則15年、公務員は20年。ローンを組む際に、頭金として物件価格の20%が最低限必要です。シミュレーションすると、以下のようになります。
物件価格:1500万円
●頭金:500万円
●残金:1000万円
●年数:15年
●月額支払:約12万円
1000万円のローンを組むと、月額約12万円の返済。500万円のローンを組むと、月額約6万円の返済となります。月額の支払いは、月収の25%がおおよその目安となっています。つまり1000万円の融資を受けられる人は、月収40万円。500万円の融資を受けられる人は、月収20万円が必要なのです。
もっとも、月収が20万円であれ40万円であれ、人件費が日本の10分の1だといわれるバリ島では、それだけの収入がある人は多くありません。
郊外のこだわり物件を買うのは土地勘のない外国人だけ
ところが実際にローカル向けに売りに出されている物件価格は、500万円程度のものが多いのです。「そんな金額で売れるのか?」と私は思っていたのですが、それが意外と売れるのです。その一方、売れ残る物件も少なくありません。では、その違いはいったい何なのでしょうか?
理由は簡単です。物件価格の値付けが上手いかどうかなのです。バリ島で月収20万円といえば、日本の感覚だと年収で1500万円くらいの高所得層。お金持ちは、物件を選べる立場にあるので要求も高いのです。
500万円で物件を売りたいのであれば、それだけの高所得層の要求に見合うものか、土地の場所は人気のエリアなのか、便利なエリアか、建物・内装は満足できるものか、そうした目利きが重要になります。こうした考え方は、日本と変わりません。
私は若い頃に、不動産屋さんと一緒に転売に携わる仕事をしていましたが、そこで失敗をしたことがあります。埼玉県の某所で75坪くらいの、ほどよく広い土地を購入したのです。分筆するのが面倒でしたし、費用もかかるという理由でそのまま売りに出しました。およそ5000万円だったかと思います。東京と比べて土地価格は安く、田舎に広い家を建てたいという需要があるのではないか、と思ったのですが全く売れませんでした。
そこで仕方なく分筆し、20坪ずつ1980万円にして、3つに分けて売りに出してみると、これが早々に売れました。そのエリアでは3000万円台で住宅を購入したいという需要があったからです。5000万円で土地を購入し、3000万円で家を建てれば合計8000万円が必要になります。8000万円で住宅を買いたい、という需要がそもそもなかったわけです。
東京都心なら8000万でも、1億円、2億円でも購入者がいます。しかし、郊外だと購入可能金額でエリアが決まるのです。これはバリ島でも同じことが言えるのです。土地を仕入れる段階で、そのエリアで住宅購入の需要がいくらなのかを調べ、それよりも2割安い価格で購入する、もしくは売り物に仕上げる、これが基本となります。
具体的にはバリ島の西部ならチャングー、クロボカン、ウマラスまで。東部ならギャニャールのサヌール寄り。中央部ならデンパサールの北側を除くエリア、このあたりであればそれなりに高い値付でも売れます。しかし、それよりも郊外になると、良い物件に仕上げても売れません。郊外エリアで広くて眺望がよく建物の仕様がよい、という物件を買うのは土地勘のない外国人だけです。ローカル向けのビジネスを行う場合には、日本人は外国人感覚を捨てることが重要になります。
日本人だと、少しくらい高くても「便器はTOTOでしょ」「エアコンは海外製はいやだな」「ドアノブはおしゃれな真鍮製にしよう」などと言ってしまいがちです。建築は積み上げなので、そうしているうちに価格は高くなっていきます。お客様はそこに価値を見出してくれるのでしょうか? その点で日本人の感覚は邪魔になります。こういったたローカルの感覚を完璧に理解すること、ローカル向けビジネスの出発点はそこにあるのです。