前回は、消防法、固定資産税など、「民泊新法」の未だ残る問題点について取り上げました。今回は、健全な民泊運営を実現するために、今後どんなルールが必要になるのかを見ていきます。

事業者の責任の一元化、匿名性の排除などが必要に

当社は、これまで機会があるたびに、民泊の理想的なあり方を実現することを願い、その法的な整備に関して以下のような提言を行ってきました。

 

まず、違法行為の空白地帯をつくらないためにも、施設のオーナーや賃借人であるホスト及び運営を代行する事業者の責任を一元化し、家主不在・在住にかかわらず一定の責務を課すことが必要と考えています。これらを進めるうえでは、 ICT(情報通信技術)の活用を許容することで、効果的・効率的に市場を拡大することが期待できます。

 

また、安心・安全な民泊を拡大するためにも、匿名性を排除する等の責務を、明確な法的根拠に基づき民泊プラットフォーマーに課し、イコールフッティングや実効性のある規制の観点から域外適用することが必要と考えています。

 

さらに、合法的な民泊の間口を狭めるような規制ばかりするのではなく、まずは”ヤミ民泊”の厳罰化及び取り締まり強化により、適正な民泊が拡大するような対応を行うべきです。

 

民泊新法が最終的にどのような形で国民の前に現れるのかについては、現時点ではまだ明確ではありません。できあがった法律にはもしかしたら不十分なところもあるかもしれませんが、今後、運用していく中で改善すべきところは改善されていくはずです。

「正直者がバカを見る」状況を作らないように・・・

トラブルのない安心・安全な民泊が営めるような環境を整えていくためには、法律をつくることもさることながら、法律の実効性を確保すること、すなわち法律を確実に守らせることも重要になります。

 

180日の年間営業日数のルールを例にすれば、当社は自社の仲介サイトに登録された民泊施設について、一つひとつ営業日数を管理して、180日になった時点で非公開、宿泊予約ができない状態にする方針です。しかし、もし他の仲介事業者が180日を過ぎても何の措置を講じることなくそのまま掲載を続ける姿勢を示していれば、「この仲介サイトはやめてあちらに移ろう」と考えるホストも現れるでしょう。そして、そのようなホストが増えれば、当社の事業は成り立たなくなるおそれがあります。

 

このように、ルールを守ろうと努めている者が一部だけで、残りの者はルールを守らず、しかもそれが許されている状況が存在すると、「正直者がバカを見る」ことになりかねないのです。

 

当社がここにあげた提言の形で「明確な法的根拠に基づき民泊プラットフォーマーに課し、イコールフッティングや実効性のある規制の観点から域外適用すること」や「”ヤミ民泊”の厳罰化及び取り締まり強化」を求めてきたのも、「民泊の健全な発展のためには、そのような理不尽な状況を許してはならない」との強い思いがあったからです。

 

これまでは民泊について正面から定めた法律がなかったために、グレーな行為については見過ごされているところがありました。しかし、これからは違います。運営者、仲介事業者が守るべきルールが民泊新法の中にはっきりと定められることになります。そのルールに反した者に対し、行政当局が厳しく対応することによって法律の実効性が確保されれば、合法的に民泊を行う人の数は確実に増え、逆に”ヤミ民泊”を行う者はいずれ一人もいなくなるはずです。そのとき、初めて本当の意味での民泊が日本に根付いたということができるのではないでしょうか。

本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

民泊ビジネスのリアル

民泊ビジネスのリアル

三口 聡之介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界中で大ブームとなっている「民泊」。日本でも約4万6000件の物件が民泊用のマッチングサイトに登録されています。民泊が広まっている背景にはシェアリング・エコノミーの流行、人口減少による遊休不動産の増加、訪日旅…

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