前回は、12に及ぶ不動産投資の「鉄則」をご紹介しました。今回は、それらについてさらに詳しく見ていきます。

なぜ「バリュー投資」が王道なのか?

第8回で説明した、筆者がいつも依頼者の資産家にお話ししている不動産投資の「鉄則」についてその一部を以下で詳しく解説していきましょう。

 

●「勝ちたいなら、競争の少ない所で勝負しろ」

需要と供給のバランスを見て、規模や物件種別において需要が大きく、競合(供給)が少ないエリアで勝負するということです。逆に、需要が少ないのに競合の多いエリアで勝負することは、まさに「負け戦」にほかなりません。先祖伝来の土地がどんなに大事であっても、そのようなエリアで賃貸マンションやアパートを建ててはいけません。早めに撤退することをお勧めします。

 

●「価値と価格は違う、バリュー投資が王道だ」

バリュー投資とは、そのもの本来の価値(バリュー)と市場での価格(プライス)の差に着目して売買することを意味します。市場価格に対して本来の価値が割安なときに買い、逆に割高になったら売る。世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェットの株式投資の手法がこれです。

 

市場ではいろいろな理由からアンダーバリューな商品が生まれます。それが「割安」であることは最初、ごく少数の投資家しか気付きませんが、次第にその存在が知られると割安感が薄れていきます。最もリターンを得られるのは初期に気付いた投資家であり、後から気付くほど、うまみは薄れます。

 

●「アービトラージから学べ、価格の歪みに目を付けよ」

アービトラージとは、価格の歪みに目を付ける投資方法であり、価格の歪みはいろいろな理由によって生じます。不動産の場合、大きく分けると、業界における歪み、制度における歪み、活用における歪みの三つがあり、相続対策の目的や状況に応じてどこに着目するか、あるいはどのように組み合わせるか、コンサルタントの腕の見せ所となります。

物件は「金融商品」という意識で投資する

●「物件を選ぶのではない、時を買え」

先に説明した「価値と価格は違う、バリュー投資が王道だ」は個別の物件の中で割安なものを選ぶ重要性を指摘したものですが、これはタイミングの重要性を述べたものです。ここでいうタイミングと、市場全体の状況をいいます。現在の不動産市場は、アベノミクスの追い風や東京オリンピックの開催、円安による海外マネーの流入などにより上昇傾向にあります。こうした状況は、通常であれば処分しにくい不良資産にも買い手がつきやすく、また金利がまだ低いので優良資産の取得には追い風だといえます。

 

●「物件に惚れるな、金融商品として投資するのだ」

個別の物件を選ぶ段階で心すべき点です。資金力のある方ほど、好立地の高級物件などに惚れてしまう傾向があります。しかし、そうした物件は得てして割高なこともあり、将来の値下がりリスクがあるので慎重な判断が求められます。

 

今や地価や不動産価格は、日銀が公表している銀行の「不動産業向け貸出態度」と連動します。つまり、不動産もいまや金融情勢によって左右される金融商品であり、銀行の融資態度を継続的にウオッチしていると、不動産価格の先行きはある程度予想できます。いずれも、投資や資産経営についての基本発想ですので、皆さんもぜひ参考にしてみてください。

 

本連載は、2015年9月19日刊行の書籍『余命一カ月の相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
〈税務の取扱に関する留意点〉
本連載の内容は、平成27年4月現在の税制・関係法令等に基づき記載しております。今後の税制改正等により税務の取扱等が変わる場合もありますので、記載の内容につきましては将来にわたって保証されるものではないことにご注意ください。個別の税務取扱い等については、税理士や所轄税務署等にご確認されることをお勧めします。

余命一カ月の相続税対策

余命一カ月の相続税対策

福田 郁雄,木村 祐司

幻冬舎メディアコンサルティング

突然やってくる“その時”、わずかな時間でできる対策は限られています。しかし、正しいノウハウをもってすれば、相続税対策は2週間程度で完了、相続税をゼロにでき、それどころか、子孫に受け継いだ資産がその後も増え続けて…

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