前回は、地方政府に見られる統計ねつ造に対する、中央政府の取り組みを取り上げました。今回は、中国財政政策は「積極的かつ有効」になるのかを見ていきます。

2016年、「営改増」が本格実施

降費に関しては、減税効果が最も期待される「営改増」、つまり営業税から増値税への移行が段階的に実施されてきており、16年が本格実施の年となった。2017年全人代に提出された予算報告によると、減税規模は5736億元に及んだ。これは、16年の税収総額(執行ベース)13兆354億元(中央政府6兆8449億元、地方政府6兆1905億元)の4.4%に相当する規模だ。

 

別途、国税総局が明らかにしたところによると、営改増移行が完了した16年5月以降1年間の減税規模は6800億元程度(16年税収総額の5.2%に相当)になった。また、12年1月〜17年2月の減税額は累計1.2兆元以上だ(4月増値税全球論壇での国税総局長発言、4月25日付第一財経)。産業によっては、増値税への移行で税率自体は高くなるが、経費の仕入れ税額控除が認められるようになるため、課税ベースが小さくなって減税になる場合が一般的だ。

企業負担軽減目標1兆元規模は実現するか?

17年4月に開催された国務院常務会議では、減税の目玉として、4段階の増値税率(17%、13%、11%、6%)のうち13%を廃止して3段階とし、13%税率が課せられていた農産品、天然ガス等の税率を11%にする措置が打ち出された(17年7月1日から実施)。その他、企業所得税について優遇税率を受けられる中小企業の範囲拡大、また中小企業の研究開発投資費用の企業所得控除範囲拡大も合わせ、17年の減税規模は3825億元に及ぶとされた。

 

しかし、営改増は基本的には16年ほぼ終了したこと、またそもそも税収は対GDP比18%程度にすぎず、一層の減税余地とその効果は限られているとの見方がある(上海財経大学公共政策学院長、3月7日付財経網)。あとは、地方政府が行政サービス提供に対する対価など、様々な名目で企業から徴収している費用をどれだけ整理できるかだ。

 

以前から「乱収費」と称され、その改善の必要性が指摘されている問題だが、目立った進捗が見られてこなかった。例えば、杭州のある企業が15年に課せられた乱収費は212項目、7400万元に及ぶという(上記財経網)。17年4月、国務院は「企業負担軽減のための2017年重点政策」を発表し、この中でも、関連部門や各地方政府に対し、各種行政サービス手数料を全面的に見直し、不合理に高いと思われるものは廃止するよう指導している。

 

財政部は4月から、企業の負担になっている一部政府性基金を廃止した他、中央政府が企業から徴収している各種費用41項目を廃止または停止し、中央政府自ら率先して乱収費問題を改革する姿勢を示している。さらに5月、国務院常務会議は、物流コストと電力料金の低減、業界団体が加盟企業に課している費用見直しも決定(総額、通年で3355億元規模)、また地方政府の各種手数料見直しで通年2830億元、上記減税と合わせ通年総額で1兆元強の企業負担軽減を見込んでいる(財政部副部長、6月9日付第一財経)。実際にこうした規模の企業負担軽減が実現するのか、それによって、財政の役割を思惑通り、需要側から供給側に移すことができるかがひとつの鍵になる。

 

(注)2017年両会期間中、李克強首相は企業負担軽減を1兆元規模にすることを目指す旨発言していた。

 

 

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