前回は、表面的には引き下げとなっている成長率目標に関して、中国当局の真意などを探りました。今回は、地方政府に見られる統計ねつ造に対する、中央政府の取り組みについて見ていきます。

経済統計の信ぴょう性が一つの焦点に

全国全人代に先駆けて各地方全人代が1、2月開催された。そのうち、遼寧全人代で省長が統計ねつ造の事実を認めたことは記憶に新しい。このため全国全人代でも、成長率を含む経済統計の信ぴょう性が一つの焦点になった。

 

全人代部長通道(全人代で各部長、つまり大臣が本会議場に入るために避けて通れない通路で、メディアが部長をつかまえ質問する場として定着)での国家統計局長への質問も、この点に集中した。これに対し同局長は、過去1年間、国家統計局が直接審査処理した重大な統計違反を含む事例は9省市区15件、内部通報が20以上に及んだことを明らかにした。あくまで地方政府に見られる問題で、中央政府はこれを監督・是正することに注力しているとの主張だ。

 

17年4月、政府は国務院(内閣に相当)常務委員会で「統計法実施条例草案」を可決、この中で、統計調査活動についてソース(源頭)にまで遡って、統計ねつ造防止にさらに取り組んでいくことがうたわれた。またこれに合わせ、国家統計局内に法律執行(執法局)がまもなく設立されることになっており、各地域統計局内にも同様の部局が設立され、本問題の改善に取り組むとみられている(4月13日付21世紀経済報道)。

財政政策に加えられた「より積極的・有効に」の文言

財政政策は「より積極的・有効に」と、昨年末の中央経済工作会議(翌年の経済運営方針を議論する重要会議、毎年末に開催)での議論に合わせ、「有効」、つまり「効果的」という文言が付け加えられた。財政政策をこれまでのように、もっぱら需要を刺激する手段として位置付けるのではなく、減税等による企業の生産コスト低減(降費)を通じて、供給側構造改革(習政権の経済政策看板)に資するものにしていくという趣旨だろう。

 

財政赤字率目標3%(金額では2.38兆元、前年比2千億元増)が維持されたことを勘案すると、積極財政と言っても、当局は過去の教訓に学び、2009年の4兆元景気対策のようなことは毛頭考えていないというシグナルを出したかったということと理解される。

 

実際は、16年民間投資の伸びが3.2%増と大きく鈍化する中で、公共インフラ投資が成長を下支えした(図表)。特に16年上期は20%増の高い伸び、17年1〜4月も、基礎インフラ投資は23.3%増と総投資の伸び8.9%増を大きく上回っている。不動産投資も9.3%増と総投資の伸びを上回る。

 

製造業の投資、サービス産業での民間投資回復の兆しも見られるが、景気を支えるために公共インフラ投資と不動産投資に依存する構図から脱却できるかどうか判断するには、もうしばらく様子を見る必要がある。

 

【図表】投資の動向

(注)伸び率は各自。
(出所)中国国家統計局
(注)伸び率は各自。
(出所)中国国家統計局

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