前回は、「遺言執行者」の指定がなく、相続手続きに手間取った事例について取り上げました。今回は、収益用マンションの「共有」が招いたトラブルについて見ていきます。

兄がマンションの共有分を担保に借金・・・

宗太郎 そういえば後輩のS君からはずいぶん昔に相続した収益用マンションのことで苦労していると聞いたことがあるぞ。

 

相子 父親から相続したマンション?

 

宗太郎 ああ、もう15年くらい前になるかな。お父さんが亡くなったんだが、相続人はS君のほかに2人のお兄さんとお母さんがいたんだ。結局、分割せずに兄弟3人とお母さんの4人で、マンションを共有することにしたらしい。

 

相子 それって最初はいいけど、あとで面倒になるパターンね。

 

宗太郎 よくわかるな。お兄さんの1人が去年亡くなって、共有分はその息子と娘が相続したんだ。そしたら息子の1人が不動産会社で働いていて「リフォームして家賃を上げよう」とか費用のかかることばかり提案してくるって嘆いていたよ。

 

相子 共有だからリフォームの費用は兄弟で負担することになるのよね。

 

宗太郎 さらに最近になって、もう1人の兄が共有分を担保にお金を借りていることがわかったんだ。家族での共有なら大丈夫と思っていたのが、お兄さんがお金を返せないと、金融会社が共有権を持つことになってしまう。「そんなことになったら、なにを言い出すかわからない」とS君も弱り切っていたよ。

価値観や経済状況が違う人と、共有財産を持つのは困難

相子 Sさんのトラブルは原因が明らかですよね? 不動産を共有しちゃいけなかったんですよね。

 

北井 いやぁ、相子さん、本当に詳しくなりましたね。そのとおりです。たいていの人はその時点の状況だけを基準に「共有でも大丈夫」と考えますが、歳月が過ぎると事情が変わります。共有者の誰かが亡くなったら、その人の権利は次の世代に相続されます。兄弟ならまだ理解できても、世代が変わると価値観も違いますから、意思統一するのは困難です。10年以上経てば、経済事情が変わる人も出てくるでしょう。共有権という財産をどう扱うか、考えがバラバラになってしまうのです。

 

宗太郎 予防する手段としてはどういうものが考えられますか?

 

北井 不動産を分割しないで相続できるよう、やはり保険などを利用して納税や「代償分割」の資金を作るべきですね。それも難しいならいっそマンションを売却して分割する「換価分割」を検討するのもいいでしょう。

 

<ONE POINT>

●不動産などの分けられない財産を共有の財産とするとトラブルの原因になりやすい

●分けられない財産は「代償分割」や「換価分割」を利用して分けられる形にしてから相続する

本連載は、2016年12月14日刊行の書籍『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続」のことがたった1時間でわかる本

「相続」のことがたった1時間でわかる本

北井 雄大

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の納税資金が足りず資産を手放すことになった、知らぬ間に親が多額の借金をしていた、相続財産の分配について家族間で争いが起こった…。相続では、正しく対策を打っておかなければ、残された家族が大きなトラブルに巻き…

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