写真:GTACスタッフ

設立30周年の節目を迎えたスリランカのコロンボ証券取引所(CSE)。かつての黄金期の再興を図るためには、どうすればよいのか。同証券取引所のトップであるヴァジラ・クラティラカ氏に、把握している課題と今後の展望などを伺った。

電子取引化等で「世界の先駆者」だった時代から・・・

コロンボの証券取引所は、今年で設立30年の節目を迎えた。目下の課題は、決済インフラを最新化することである。

 

証券取引所は企業の資金調達を可能にし、株式の値段を定め、株を売りたい人と買いたい人を結びつける。もし取引所がなければ、人々は企業に投資をすることができず、企業は資本を還元することもできない。

 

コロンボ証券取引所(CSE)は30周年を迎えた。その意義は称えてもいいだろう。CSEは世界的にもかなり早い段階で、対面取引から電子取引に切り替えた取引所であるが、これは大きな足跡である。

 

一方で、投資家にとってより取引ができるための、セントラル・カウンターパーティ(CCP)(※1)と呼ばれる清算機関の導入は未だ達成できていない。決済インフラの最新化に失敗しているだけでなく、2011年から2012年の間には、不正な価格操作取引が行われ、CSEの信頼が落ちてしまった。CSEが抱える課題について、CSEトップのヴァジラ・クラティラカ氏に話を伺った。

取引先リスクが軽減する「CCPの導入」で取引量増加へ

――まずCSEのトップとして、CSEが抱える問題について教えてください。

 

8年前までコロンボ証券取引所は、世界の先端を走っていました。ロンドンやインドよりも先に、世界で8番目に証券電子化を取り入れたのです。しかし1997年以降、資金不足とプライオリティの見誤りから、イノベーションをとめてしまい、現在は、当時の先駆性を回復しようと努めています。そうしない限り私たちの未来はありません。

 

CCPを導入していない取引所はいくつかありますが、いまやCCPは世界中の常識です。スリランカとしても導入しないわけにはいきません。2016年中にはCCPを運用させます。CCPはリスクマネジメントのためにあり、多くの内外のファンドはリスクのない取引を望んでいます。一般的には、CCPを導入することで取引量が20%増加し、DVP決済(※2)も可能となります。また、流動性が向上し、デリバティブ商品も導入されることになるでしょう。

 

――CCP導入やDVP決済についてはこれまでもずっと論じられたにもかかわらず、実現していません。これらを実行できるという自信はどこから生まれるのでしょうか?

 

CCP導入やDVP決済は純粋に必要なことで、実行しなければならないことです。これには、取引所全体も証券取引委員会(SEC)もコミットしています。購入者が株式の代金支払いを拒否した事件は、金融システムに大きな影響を与えました。それは我々にとってショックであったのと同時に、なぜ我々がCCPの必要としているのかも明らかにしました。証券取引所に対するマッキンゼーの提案のほとんどは、すでに戦略プランに組み込まれています。いまやそれらを実行するのみです。そうすれば実現します。取引委員会も我々に大きなプレッシャーを与え続け、そうすることを人々が決めたのです。

 

※1 CCP(セントラル・カウンター・パーティー)
日本語では「金融商品取引清算機関」。複数の市場参加者によって複数回行われる取引の場では、直接、相手方と決済をすることは非効率かつリスクがあるため、清算機関が取引の間に入って決済の履行を保証する制度。

※2 DVP決済
Delivery Versus Paymentの略。証券の取引において、相手方の債務不履行のリスクをなくすため、引渡し(Delivery)と支払い(Payment)のうち、一方が行われない限り他方も行われないようにすること。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」に掲載した記事を、翻訳・編集したものです。

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