Q:今期500万円ほど利益が出そうなので、節税対策として10人の社員に50万円ずつ臨時ボーナスを出そうと思っているのですが……。
A:愚の骨頂です!
会社に現金を残すことが大事!
たしかに、社員に臨時ボーナスを出せば、利益を減らすことができますので、法人税を減らすことができます。さらに、臨時ボーナスをもらった社員は喜びますので、社員のモチベーションもアップして一石二鳥の対策だと考える人も多いことでしょう。
しかし、私に言わせれば、こんなものは愚の骨頂です。理由は2つ。
1つは、会社に現金が残らなくなってしまうからです。現金がないということは、急にお金が必要になったときに対応できないということです。借りられる当てがあればいいでしょうが、それがないのであれば、最悪の場合は倒産という事態にもなりかねません。それでは、何のための節税対策なのか、ということです。本末転倒も甚だしいといえるでしょう。
もう1つの理由は、社員のモチベーションというのは、すぐに下がってしまうものだからです。たしかに、一時的にはアップすると思います。しかし、モチベーションの高い状態がどれだけ続くのかというと、おそらく1か月も続けばいいほうだと思います。下手をすると、ほんの一瞬で終わってしまうこともありえます。
結局、お金の効果は、それほど長くは続かないのです。しかも、今年出した臨時ボーナスが来年は出ないということになると、社員のモチベーションは一気に下がってしまいます。「去年は出たのに……」とか、「今年のほうが利益は出ているはずなのに、なぜ臨時ボーナスを出さないんだ!」という不満のほうが大きくなるのです。したがって、安易な臨時ボーナスは、百害あって一利なしといえるでしょう。
従業員のやる気をアップさせる「3つの報酬」
じつは、報酬というのは、3種類あります。
①心の報酬
②技術の報酬
③お金の報酬(給与)
まず①については、「認められた」「褒められた」「感謝された」という心の報酬です。心の報酬は、社内において、感謝を伝える風土や、ありがとうを言う習慣によって産まれます。じつは、これが従業員のやる気の源になっている会社も多数存在します。仲間同士の連帯意識が芽生えて、従業員がイキイキと働いてくれるようになるのです。
②については、自分の成長に気づける、手に技をつけるという報酬です。お寿司屋さんで働いている若い職人さんが、そんなに高い給与をもらっていないのに辞めないのはこれがあるからです。大将や先輩から技術を教えてもらって、または自分で会得して、将来、店を出すために働いています。これも、どれくらいの品質のものを、どれくらいの時間でできたなどの数値化した基準を設けることで、やる気の底上げにつながります。
このように「心・技術・お金」の3つの報酬で、従業員のやる気をUPさせ、高いパフォーマンスを発揮できる風土づくりをすることで、喜び溢れる職場環境を作ることができるのです。
スティーブ・ジョブズの名言で、「美しい女性を口説こうと思ったとき、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るのかい?」というものがあります。従業員の求人広告を出す場合、他社が高い給与で募集していたら、あなたはもっと給与を高くして募集しますか?
同じ項目で量だけを増やすのでは、大きな効果は期待できません。新たに従業員を募集するとき、従業員の離脱防止のために、他社がやることと同じ尺度で勝負せずに、違う基準を作り上げて勝負する必要があると感じています。経営者は従業員の笑顔を創り、幸せにするヒーローです。どのタイミングで、どんな表情で、どんなセリフを言うのか。お金を使わないとしたら、何ができるのかを考えることが、これからは重要です。