今回は、中小企業社長のための「退職金制度」といえる小規模企業共済の概要について見ていきます。※本連載では、税理士、西浦雅人氏の著書『今すぐ社長の給料を半分に下げなさい』(リンダパブリッシャーズ)の中から一部を抜粋し、具体的な事例とともに、社長として気をつけたい「間違いだらけの節税対策」について解説していきます。

積み立てた掛金に応じた給付金がもらえる

前回の続きです。

 

じつは、もう1つ中小企業の社長や個人事業主におすすめの共済があります。

 

それは独立行政法人中小企業基盤整備機構の「小規模企業共済」です。

 

これは中小企業の社長が退職したり、個人事業主が事業を廃止したりしたときに、それまで積み立てた掛金に応じた共済金がもらえるという共済制度です。いわば国が作ってくれた中小企業の社長や個人事業主のための退職金制度といえます。

 

掛金は最高で月額7万円で、1000円~7万円の範囲内であれば、500円単位で自由に設定でき、加入後に掛金を変更することも可能。

 

満期や満額はないので、退職または廃業するまでは、いつまででも、いくらまででも掛金を払い続けることができます。

 

途中で急にお金が必要になった場合は、解約して解約手当金を受け取ることもできますが、一般貸付制度もありますので、解約せずにお金を借りることもできます。

払った掛金が全て所得控除の対象に

小規模企業共済の良いところは、払った掛金が全額所得控除になることです。

 

しかも、新規加入の場合は、1年分の掛金を全額まとめて前払いすることができるので、12月に駆け込みで1年分の掛金を前払いすれば、その金額がその年の所得控除の対象となり、所得税と住民税を節税することができます。

 

ちなみに、月額の掛金を7万円に設定すれば、1年間で84万円の所得控除ができるのです。

 

なお、小規模企業共済は会社が入るものではなく、個人で入るものなので、会社の節税対策としては使えません。

 

これも前回の倒産防止共済と同じく、中小企業基盤整備機構と委託契約をしている全国の金融機関や商工会、商工会議所などで加入できますので、所得税、住民税の節税をしたい人は検討してみるといいでしょう。

 

実際に顧問先であった事例をご紹介します。

 

その社長は小規模企業共済を月5万円の掛金で30年と8か月かけ続けました。

 

払込総額は1840万円。

 

節税総額は552万円(所得税住民税の合計税率30%の方だったので、1840万円×30%)。

 

そして、受取共済金は2660万円。

 

これに対する受取時課税額は120万円でした。

 

結局、どれだけトクをしたのかをキャッシュベースで計算すると、

 

-1840万円+552万円+2660万円-120万円=1252万円。

 

つまり、1840万円を支払って、3092万円返ってきたということで、1252万円プラスになったということです。

 

小規模企業共済、恐るべしですね。

本連載は、2017年1月31日刊行の書籍『今すぐ社長の給料を半分に下げなさい』(リンダパブリッシャーズ)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

今すぐ社長の給料を半分に下げなさい

今すぐ社長の給料を半分に下げなさい

西浦 雅人

リンダパブリッシャーズ

はじめまして、税理士の西浦雅人です。私はこれまで数多くの社長や個人事業主の方とお会いしてきましたが、残念なことに世の中には間違った節税対策をしている人が、本当にたくさんいるものです。私の知り合いの社長も、そんな…

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