大人になってからの矯正歯科治療は女性が多いが・・・
現在のところ大人になってから矯正歯科治療をする人の大半は女性ですが、同じように矯正歯科治療をしている人や、かつて矯正歯科治療をしていた人たちと〝歯列矯正仲間〟になることもあるかもしれません。
患者さんの話を聞いていると、〝歯列矯正仲間〟が共通の話題で盛り上がるシーンはことのほか多いそうです。たとえば、矯正中に起こりがちな経験を「矯正あるある話」で共有して楽しんだり、矯正中でもおいしく、気兼ねなく食べられるメニューが揃ったレストランの情報を交換したり、実際その店に一緒に出かけることもあるといいます。
「女性が大半なら肩身が狭いのでは」と遠慮せずに、「矯正を通して女性の仲間が増える」と考えてみてはどうでしょうか。婚活で矯正歯科治療をする男性にとっては、あるいはそこにチャンスの場が広がる可能性が無きにしもあらずです。
要望に合わせた治療方法で日常生活の負担も軽減
また現在、矯正歯科治療は若い世代だけでなく、上の年齢層にもどんどん広がっています。男性の場合、会社社長など、社会的地位の高い人も目立ちます。
そのような人たちは、実際に矯正歯科治療をやるかどうかを決める際、私が矯正装置について説明を始めると「そういう装置を付けるのは、今さらちょっと……」と二の足を踏みがちです。「歯並びは治したいけれど、今さら矯正装置は付けたくない」という自意識が見え隠れします。そして「ワイヤーが見えるような装置をがっちりはめるのは嫌だけれど、ほかに何かいい方法はありませんか? あるなら試してみたい」という要望を受けることがよくあります。
矯正歯科治療にはさまざまなアプローチの仕方があります。たとえば、上の前歯のすき間を無くすために前歯だけを動かせばいい場合、マウスピースを付けるだけで充分に改善することも可能です。
以前、相談にやってきた50歳代の男性も、この「マウスピース矯正」で上の前歯のすき間を矯正することになりました。この患者さんは建築会社の社長で、立場上、会食の機会も多いとのことでした。
マウスピース矯正は、自分で外したり付けたりでき、また、食事の時には必ず外します。
実はこの患者さんは「最近、飲みに行くことが多くて、マウスピースをあまり使えていないんです」などと言って、マウスピース矯正をさぼっている時期がありました。そのせいで治療に波ができ、その分、治療期間も長引いてしまったのですが、しかし逆に考えれば、仕事上の付き合いを支障無くできたことで、この患者さんにとってはより負担なく、日常生活を維持したまま矯正歯科治療を行えたのではないかと思います。
その会社社長は、少し余計に期間がかかってしまったものの、1年ほどで歯のすき間を無くすことができ、とても満足して治療を終えていきました。